昨年2015年の夏頃から、アメリカ株はずっと横ばいです。

昨年の夏や、今年の初めなどS&P500が10%以上下落することがありましたが、そのきっかけの一つとなっているのがFRBの利上げです。

FRBとはアメリカ連邦準備制度理事会のことで、議長はイエレンさん。

2015年12月16日に、約9年半ぶりに利上げを実施しました。

完全雇用に近づいてきたこと、安定的な物価上昇、強い経済との判断によるものです。

利上げ直後はアメリカ株価は上昇したものの、その翌年1月から急落しました。

もちろん株式市場は様々な投資家・投機家の憶測に左右される複雑系の世界なので、利上げのみで株価の動きを説明するのは無理がありますが、株価急落の一因としてFRBの利上げがあることは間違いありません。

最近はまたFRBのタカ派発言が目立ち始めました。
イエレン議長は経済や労働市場の勢いに陰りが出なければ、数カ月中に利上げを行うことが適切と発言しています。
年内の利上げ回数は2〜3回で、早ければ6月のFOMCで利上げが決定される可能性があります。

さて、金利が上昇すると、株価は下落します。

経済学部の大学生、日経新聞くらいは読んでいる社会人、株式投資家であれば、この事実くらいは知っているでしょう。

なぜ金利が上昇すると株価は下落するのか、って考えたことありますか?

  利上げで株価が下落する理由

①ファイナンス論の公式

学術的な側面で考えてみます。

株価は一株当たりの企業価値です。
企業価値とは、その企業が稼いで将来株主に還元するキャッシュの現在価値です。
つまり、企業の将来のすべての配当金の現在価値が企業価値であり、それを発行済株式数で除した金額が株価と言えます。

これを配当割引モデルと言います。
公式で示すとこうなります。

配当割引

分子の配当金(企業の収益)が増大すれば、株価は大きくなります。

分母の金利が上昇すれば、株価は小さくなります。

感覚的な理解は置いておいて、算数的に考えて割る数である金利が上昇すると結果の株価が小さくなることがわかると思います。

ファイナンス論で教科書的に考えると、利上げで株価が下がる理由はこう説明できます。

 

②株式の相対的な魅力が低下する

①のファイナンスのお勉強的な考え方は、数式としては納得かもしれませんが実生活との関連が薄くていまいち腑に落ちないと思います。

そこで、もう少し現実的な説明をします。
金利が上がると債券と比較して株式の相対的な魅力度が低下するから株価が下落するという理由です。

債券と株式は、資産運用をするうえでその割合をどうしようか皆迷うものです。
ポートフォリオを構築する上でまず考えるべきことは、どの銘柄を買うかではなく、債券と株式の割合をどうするかということです。
安全に運用したい人は債券:株式 = 60:40くらいにするかもしれません。
私みたいに高い運用利回りを求める人は債券:株式 = 0:100にします。

債券はリスクは低いけれど、期待リターンも低い。
株式はリスクが高いけれど、期待リターンも高い。
ローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンが世の中の一般法則です。

中央銀行が利上げをするということは、債券の利回りが上昇するということです。
債券のリスクは変わらないまま、リターンが上昇します。

すると、債券の魅力は以前より上がります。

そうすると、今まで株式を購入していた人が株式を一部売却して債券を買おうとします。

低金利で債券のクーポンが額面の1%だったら、債券なんて買わずに多少リスクはあっても株式を買うと判断している人が大多数だとします。
ところが、中央銀行が2%利上げして債券のクーポンが額面の3%にまで上がったら、リスクを冒して株式で7%〜の利回りを求めるくらいなら、安全に3%の利回りを債券で狙いに行くという人が必ず出てきます。

そうして、金利が上がると株式が売られて債券が買われます。

これが感覚的に理解しやすい、金利が上昇すると株価が下落する理由です。

 

③企業の利息負担が重くなって収益を圧迫する

企業はエクイティだけでなく負債でも資本を調達します。

金利が上がるということは負債コストが上がるという事であり、損益計算書の支払利息が重くなることを意味します。

支払利息が増えるとその分当期純利益が減少します。

当期純利益とは企業が売上高からすべての費用を控除した後の株主に帰属する利益ですので、当期純利益が減るという事は、現在・未来の配当金減少要因となり株価は下落します。

  株価、金利を確認するにはWSJ

経済の専門家でも何でもない普通のサラリーマンが、金利と株価の関係の背景を理解する必要はないかもしれません。

金利が上がると一般に株価が下落するという事実だけ知っているだけで問題ないかもしれません。

実際、長期でETFやインデックスファンドを保有しているような長期投資家が、このような理論的背景を理解したところで運用パフォーマンスが向上することはないでしょう。

むしろ何も知らないまま、機械的に買います人の方が良い結果になることすらあり得ます。

それでも、できれば一つ一つの経済指標の動きの背景を考えるようにした方がいいと思います。

なぜかいうと、その方が投資家人生を楽しく過ごせると思うからです。

仕事が辛いと思うのはどんな時ですか?
自分の仕事の内容や意義、意味を理解できない時ではないでしょうか。

日経新聞を読んでいる人も多いと思いますが、最初は読んでもつまらなかったと思います。
読んでもほとんど内容を理解できないからです。
そりゃ、読んでも理解できない文章を朝から電車で読んでも苦痛でしかありません。

仕事の経験を積んで、本を読んで、少しづつ政治・経済などを知りだすと新聞記事の横の繋がりがわかってきて、内容も理解できて楽しくなります。

何となくわかったつもりになって読み飛ばしたくなる気持ちは凄くわかりますが、たまには立ち止まって考えることも大切だと思う次第です。

ちなみに、株価や金利をチェックするときに私が一番利用しているのはウォールストリートジャーナル(WSJ)日本版のトップページです。

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