アメリカで税制改革案の最終化が進んでいます。法人税率を35%から20%近くまで下げることがもっともインパクトがある点ですが、他にも色々と論点はあります。地味に企業行動に影響があると思われるのが、設備投資の即時償却を5年間認めるというものです。

企業が億単位の巨額の設備投資、たとえば工場新設や機械の購入を実施しても通常はそのコストは一旦資産化されます。一度バランスシートに資産化した後で、減価償却を通じて徐々に損益計算書で費用化されます。しかし、今回の米国法人税改革で、税務上は5年間この減価償却を不要にして即費用化OKとなるかもしれません。法人所得計算上、設備投資コストを即時費用(損金)にできる可能性があります。

即時償却(=即時損金化)して何かメリットがあるのか?
めっちゃあります!

税務上即費用(損金)にできるってことは、その分所得が圧縮されて法人税額が減るということです。でも、これは法人税の支払総額が減るわけではありません。投資初年度に一気に減税効果を享受して、翌年以降は税務上の減価償却が発生しない分税金は増えます。

税金支払いの総額は変わらなくても、支払う年度が変わるだけでも企業には大きなインパクトがあります。キャッシュインはなるべく早い方がいいし、キャッシュアウトはなるべく遅い方がいいです。即時償却することで、キャッシュイン(投資コストが損金化されて法人税額を減らすという意味のキャッシュイン)が前倒しされます。キャッシュインが早くなることは企業にとっていいことです。

キャッシュフロー総額が変わらなくても、その期間配分が変わるだけで経済的な意味は大きく変わってきます。繰り返しですが、キャッシュインは早めにキャッシュアウトは遅めにが原則です。

だから、投資信託は魅力的なんです。
投資信託では、分配金に対する課税を解約時まで繰り延べることができます。免税ではなく、あくまでも課税の繰り延べです。税金を今払わないだけで、いずれは払わなきゃいけません。税金支払い額自体は不変でも、その支払いが後倒しになることは大きなメリットです。投資信託の分配金課税の繰り延べは、特に長期投資家にとっては想像以上に大きなメリットになると思います。

 

 

ところで、設備投資の即時償却が税制改革案に盛り込まれて、かつトランプ大統領が公約に入れていた積極的な財政出動が実行に移されたら、米国経済はかなり加熱しちゃうかもしれませんね・・。やはり設備投資の即時償却が認められる5年間の内に、なるべく投資を行おうと経営者は考えるはずですから。減税に誘惑されて、不必要に投資をし過ぎると経済成長はすれど同時にインフレ率も高まる可能性があります。そうなれば、FRBは利上げスピードを上げるかもしれませんね。今のところ、2017年12月に追加利上げして、2018年には3回の利上げを行う可能性が濃厚ですが、どうなるでしょうか。