【IFRS】インカムゲイン(配当金)とキャピタルゲイン(売却益)は違う!?
日本の上場企業にはざっくり言って現在3つの会計基準が認められているという歪な状況です。
3つとは日本企業、米国基準、IFRS(国際会計基準)です。正確にはもう一つ修正IFRSというのがあって4つなのですが、話がややこしくなるので割愛。
2000年代後半から日本でもIFRS適用を強制すべきだという意見が出ていましたが、当時の自見金融担当大臣が延期を表明していました。
現在日本ではIFRSの強制適用は決まっていませんが、任意適用は可能です。
大手商社や製薬会社などを中心にIFRSの適用が進んでいます。
日本でコストをかけてIFRSを適用しようとしている企業には2つの傾向があるように思います。
一つはのれん償却を回避したい企業。グローバルM&Aを頻繁に行い多額ののれんを持つ企業の経営者はIFRSを好んでいるように思います。
もう一つは競合他社が米国や欧州の企業の場合です。製薬会社など。グローバルの競合企業間の比較可能性を投資家から求められがちであり、こういう企業もIFRS適用の誘因があります。
IFRSと日本企業とで最も大きな違いはのれん償却の有無です。詳細はこちらの記事をご覧ください。
さらに、あまり世間に注目されていないけど意外に処理が変更になる論点として有価証券の会計処理を以前ピックしました。
この有価証券の会計処理について、改めて考えたら不思議だな!って感じたことがあります。
配当金は特別扱い!?
IFRSを適用している日本企業の有価証券の会計処理をまとめるとこうなります。
時価評価する? | 純利益に反映する | |
普通の株価上下 | Yes | No |
大きな株価の下落 | Yes | No |
株の売却 | Yes | No |
簡単にいうと、IFRSでは企業が保有している株式などの有価証券を毎期時価評価するよう求めているけど、その評価損益や売却損益はPLで報告しなくていいということです。(細かい話をするとPL処理することもできるけど、その話は割愛)。
実は裏話なのですが、IFRSのこの規定(PL処理しなくていい)は日本のために作られた規定だと言われています。
なぜなら、日本は昔から持合株式が多く、企業が政策目的で保有する持合株の評価損益を毎期PLに表示させると投資家に変な誤解を与えてしまう恐れがあるからです。
そこまではまあいいとします。
ところがね!、最近本を読んでいて気付きました!
これは投資家として違和感を感じる!と思ったことがあります。
それは、、、
配当金はPL処理するという点です。
株式投資家のみなさん、これはもはや会計の話ではありませんよ投資論の話です。株式投資家としてどう思いますか!?
おかしくないですか!?
株式投資家にとって、インカムゲイン(配当金)とキャピタルゲイン(売却益)って何か違いはありますか!?
少なくとも株を売ってキャピタルゲインを実現させてしまったら、もはや自分の投資利益がインカムゲインだろうがキャピタルゲインだろうが関係ないですよね?
IFRSではキャピタルゲイン(売却損益)はPL処理しない。でも、インカムゲイン(配当金)はPL処理するというのです。
うーん、、これは不思議な会計処理です。
例えば、企業が保有している株式で自社株買いが実施されたら、その利益は株価上昇を通じてキャピタルゲインとして企業には恩恵がありますよね。でも、その自社株買いで還元された利益はIFRSではPLで損益処理されないということになります。
でも、その株について配当金が入金されたらそれはIFRSでもPLで収益処理することになります。
同じ株主還元でも、自社株買いはPL処理ダメ、配当金はPL処理してよい、ということです。
ある企業が高配当のフィリップモリス株を保有していれば、フィリップモリスからの多額の配当金をPLで収益処理できます。
ある企業が無配のアマゾン株を保有していれば、たとえ多額のキャピタルゲイン(売却益)が出たとしても一切PLで収益処理できません。
(※日本企業が政策目的で大手米国株を保有することをあまりないと思いますが、これはあくまでも例です。)
恐らく配当金は実際にキャッシュが入ってくるから、それはさすがにPL処理しなさいというのがIFRSの会計規定の趣旨なのだと推測します。
IFRSを制定しているのはIASB(国際会計基準審議会)という機関で、非常に専門性の高い知識集団ですが、この規定は今一腑に落ちませんね。
そもそも、この株の評価損益や売却損益をPL処理しなくてもいいという規定は日本のためだけに作られた特別規定なので、あまり深く検討されずに配当金はPL処理しろって決まったんだと思います。
もし私がこのIASBのボードメンバーの一員だったら大反対していますけどね。
配当は大事
インカムゲインもキャピタルゲインも、株式の投資損益計算上で区分けする意味はありません。どちらも利益は利益です。
ただ、株の値上がり益を狙うよりも地道にインカムゲイン=配当金を重視したほうが、長期株式投資では有利だということをシーゲル教授は発見しました。私はそれを信じて高配当な株式を中心に投資しています。
実現してしまえば、配当金も売却益も一緒ですが、長期投資家は配当を大切にすべきです。
IFRSとシーゲル流投資家は意外にウマが合うのかもしれません。