ヘルスケア銘柄を物色しています。今持っているのはファイザー(PFE)、アッヴィ(ABBV)、メドトロニック(MDT)の3つ。もう一つ新しく仲間を増やしたいと思っています。

色々悩んだ末、狙いを定めたのがアボット・ラボラトリーズ(ABT)。何の意外性もない、セクター最大手クラスの銘柄ですね。

製薬2銘柄、医療機器2銘柄にしたく。相対的にハイリスクな医薬品と、業績ボラティリティが低い医療機器でバランスを取りたいと考えています。医薬品はすでに2銘柄(PFEとABBV)保有しているので、これ以上は買わない予定。メルクやブリストル・マイヤーズ・スクイブとの銘柄入替はあるかもしれません。

医療機器がMDTしかないので、ここを補強したいです。ABTの他にはストライカー(SYK)やボストンサイエンティフィック(BSX)、ベクトン・ディッキンソン(BDX)、バクスター(BAX)などの候補がありましたが、やはり最大手のABTが良いかなと。

ABTは1973年以来46年間増配を続けています。『株式投資の未来』ではフィリップモリスに次ぐ高リターンを叩き出した銘柄として紹介されています。財務データを見ても、非常に高収益で財務も安全。2016年にはセントジュードメディカル買収というビッグ・ディールを実施しました。両者の製品ポートフォリオには重複が少なく、カニバリの懸念もありません。買収のため自社株買いは最近少ないですが、今後数年でEPS、DPSともに大きく成長するのではと期待しています。

ABT欲しい。が、高いです。2019年予想EPSに基づくPERは23倍以上あります。同業メドトロニックの同指数は16倍なんですけどね。両社の過去のPL推移を単純に見るだけでは、なんでここまでPERに差があるのかちょっと疑問。もちろん、マーケットは私なんかよりも遥かに優秀なので、ABTが高く評価されているのはそれなりの理由があるはずですが。

あと、両社とも組織再編が多すぎて過去の利益推移を見てもオーガニックな成長がどれくらいか今いちわからないです。MDTは2015年にコヴィディエンを買収。これを機にアイルランド籍となり低い法人税率の恩恵を受けています。ABTは2013年にバイオ医薬品部門をアッヴィ(ABBV)として分社化。さらに、前述しましたが2016年にセントジュードを買収。

一つ一つのディールの規模がデカすぎて驚きます。ウン兆円クラスです。

今思うと、アボットがバイオ医薬部門を分社化したのも納得です。ABBVと現ABT(分社化後)のバリュエーションはあまりに違います。ABBVの予想PERは9倍を下回っています。製薬メーカーの中でも特段低いです。一方で、ABTの予想PERは23倍でしたね。

・・・なるほど、そりゃ分社化したくもなるわな。同じ企業の中にこれだけバリュエーションが異なる部門が並存していたら、投資家は困ります。株式報酬を得る経営幹部も困ります。もしABTとABBVが一緒だったら、今頃どれくらいのPERなのかな。足して2で割って16倍くらいか。わからんけど。まあいいや、すみません、余談でした。

医療機器メーカーのPERが高いのは理解できます。各国当局の規制を順守してビジネスを展開するにはナレッジの蓄積が必要です。特に米FDAの規制はかなり厳しい。EUも「欧州医療機器規則 Medical Device Regulation」を発効し、規制を厳しくしています。参入障壁は非常に高いです。また、医薬品メーカーほど特許切れのリスクにも晒されていません。

世界の医療機器市場は拡大しています。市場が大きいのは圧倒的に米国ですが、成長率では中国などアジアが高いです。ABTは海外(米国外)事業を重視しています。MDTの米国売上比率が56%なのに対し、ABTのそれは36%です。ABTの方が成長する中国、アジアのパイを取り込めるチャンスがありそうです。

そういう事情を考えると、ABTのバリュエーションが高いのは理解できます。PER23倍というのは法外な金額ではないと思います。が、ちょっと抵抗ある。何が妥当な株価かなんてわからないけど、もうちょっと下がらないと食指が伸びないかな。

大統領選に向けて医療政策が活発に議論されています。医療はすべての国民に関係することですから、ガッポリ儲けている医療保険会社や他ヘルスケア企業は批判されがち。製薬会社などは高い収益を得るに値する価値を社会に提供してるわけですが、まあ今のポピュリズムの波に乗るには大手ヘルスケア企業は格好の標的でしょう。

この逆風によって、ABTの株価がもうちょい調整してくれればいいな~などと淡い期待を抱いています。仮にMDTと同等のPERまで株価が下がれば52ドル(現在74ドル)。さすがにそこまで調整しないか。せめて60ドル台前半まで下がって欲しい。PER20倍は割って欲しい・・。

こうやって下値を探っているうちに買いの機会を逸したことは、今まで何度もありました。長期投資なんだから買値にあまりこだわらず、今のPER23倍で買うのも選択肢の一つ。迷うな・・。やはりもう少し待とうと思います。

あ、あと、ヘルスケアセクターではジョンソン&ジョンソン(JNJ)も有力候補です。ABTとJNJはウォッチを続けます。

(関連記事)
ABT銘柄分析