今日(2019年6月11日)のウォールストリートジャーナル日本語版に『バフェット氏が好む「堀の広い株」、買うべきか?』という、米国株投資家を誘惑するタイトルの記事が掲載されました。

記事によると、バフェットが好むような広い経済的堀のある優良株のリターンは低いというのです。

モーニングスターのアナリストらがイエール大学のロジャー・イボットソン名誉教授(金融学)と協力して行った最新調査によると、堀の広い株は多くの場合、最高のリターンをもたらさないことが分かった。というのも、堀の広い銘柄は最も人気を集める傾向があり、資金をつぎ込む投資家が多ければ、それだけ株価が過度に上昇するからだ。

ウォールストリートジャーナルより

確かにその通りかもしれません。現代はインターネットで財務データもPERも配当利回りも、誰でもすぐに調べることができます。質の高い企業には相応の値段が付けられており、αを得る機会は少ないかもしれません。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンの原則に則って、比較的リスクの低い優良株のリターンは相対的に劣って然るべきかもしれません。

しかし、異なる結果を示すデータも知っています。
それをご紹介します。

『ウォール街で勝つ法則』という6千円もする本があります。6千円以上の価値があったので買ってよかったです。

『ウォール街で勝つ法則』では「主力銘柄」というグループを作っています。小型株、大型株という分類はよく聞きますが、主力銘柄とはあまり聞き慣れない表現ではないでしょうか。

「主力銘柄とは知名度の高い大企業で、売上高は平均を大きく上回る。キャッシュフローも潤沢で、大量の株式が市場に出回っているものが多い。」と定義されています。やや曖昧な定義ですが、要するに米国株投資家に人気の優良株と思ってよいでしょう。ジョンソンエンドジョンソン、マイクロソフト、ウォルマート、ボーイングなどです。

これら主力銘柄の長期リターンは非常に優秀です。ウォールストリートジャーナル紙の分析とは異なります。ただし条件があります。その条件とはバリュー投資であることです。低PER、高配当利回りといった条件を満たしている主力銘柄に投資することが条件です。

「主力銘柄から配当利回り上位50銘柄を抽出する投資戦略」の1952年~1996年までの複利リターンは年率15.26%にもなります。大型株平均の10.96%を大きく上回る成績です。

著書は配当利回りに着目するのがもっとも成績がよいと結論付けていましたが、低PER銘柄を抽出する方法も優秀な結果を残しています。一方で、高PER銘柄はダメです。主力銘柄(=優良株)であっても、高PER銘柄ばかり掴んでいるとリターンは小さくなるとのこと。

知名度が高く、業界トップの大企業は、低PERや低PCFRなどのバリュー特性があれば、優れた投資対象となる。だが、基準のなかで最も有効なのは、配当利回りである。

(中略)

最後に、この投資戦略(=主力銘柄バリュー投資戦略)はローリスクでハイリターン、しかもそのリターンが長期にわたって続く。S&P500指数など大型株指数にポートフォリオを連動させているなら、こちらに乗り換えてみるようにお勧めする。

『ウォール街で勝つ法則』

最初に紹介したWSJの分析はリターン測定期間が短いのかもしれません。短期では値動きが緩慢な大型優良株のリターンは平均以下になっても不思議ではありません(特に景気回復期では)。しかし、50年レベルの長期で見ると質の高い株は低リスクで高いリターンを達成したことがわかっています。

さて、これからはどうなるでしょうか。『ウォール街で勝つ法則』のリターン測定期間は20世紀後半です。21世紀もこれまでと同じ主力銘柄のバリュー株投資戦略は成功するのでしょうか?

私は成功すると思っています。なぜなら、値動きの小さい「つまらない」株を長期で保有するという退屈な投資法は誰もやりたがらない、というのは昔も今も変わらないと思うからです。50年経てばテクノロジーは大きく進歩しますが、生物学的な人間のDNAは変わりません。