11月以降、アップル(AAPL)の株価が急落しています。以下は2018年初来のアップルの株価チャートです。

10月初旬に株価は一時230ドルを超えましたが、以降は軟調で12月11日現在は170ドルを割っています。

スマホ買い替えサイクルの伸び、iPhoneの販売単価の天井感、米中関税リスク、クアルコムとの訴訟問題といった材料が売り要因でしょうか。まあ、株価変動の要因を特定するのは難しいです(てか無理)。投資家が一度悲観的になると、買い材料は無視され売り材料だけに注目されがちです。

アップルの現在の配当利回りは1.7%で予想PERは14倍(益回り7.1%)。配当利回りはS&P500平均と同等レベルまで上がってきました。PERはすでに市場平均を下回っています。

予想PER14倍という数字だけを見れば割安に見えるかもしれません。しかし言うまでもないことですが、PERが低いからって即割安と言えるわけではありません。

PERが妥当かどうかは、以下の2つの観点を考慮して判断する必要があると思っています。
①将来のEPS成長力
②将来のEPS安定度

①についてですが、PERが低くても利益(EPS)成長が鈍いのであれば、それは割安とは言えません。たとえば、通信大手ベライゾンコミュニケーションズ(VZ)の予想PERは12倍しかありませんが、同社の過去10年のDPS(一株当たり配当)成長率は年率3.1%とインフレ率をわずかに上回る程度しかありません(EPSは数字がブレるので、DPSで見ています)。PER12倍でもVZが割安とは思いません。

②についてですが、PERが低くても利益安定度が低いなら割安とは言えません。というか、利益が不安定な銘柄はもはやPERでバリュエーションを判断するのは不可能です。例えば、エクソンモービル(XOM)の予想PERは14倍ですが、同社のEPSは市況によって大きく変動するので、PER14倍が妥当かどうかは判断が付きません。XOMのような市況株のバリュエーションをPERで判断するのは無理があります。

PERって所詮、翌期の予想利益と株価を比較しているだけです。何でもわかる魔法の数字じゃありません。至極単純な指標です。表面的なPERの数字だけでは何も判断できません。せめて、①将来の利益成長力、②将来の利益安定度という2点は考慮したいところ。

アップルのディフェンシブ性はまあまあ強い。アップル株に投資妙味を感じる

ではアップルのケースはどうでしょうか?

アップルのPER14倍が安いと言えるかどうかは、アップルの今後の利益成長力と利益安定度にかかっています。

特に注目したいのは利益安定度です。PER14倍が妥当もしくは割安と言えるか否かは、ひとえにアップルの今後の利益安定度(ディフェンシブ力)次第だと思います。

今アップルはマーケットに試されていると思います。ディフェンシブ性が強いのか弱いのか、マーケットがアップルの力を見極めようとしている、そういう風に見えます。なんせ、まだまだ新しい会社ですから。

私は以前、「アップルの目標株価は255ドルだ!」という記事を書きました。170ドルまで下がっている今、この記事を蒸し返すのはちょっと恥ずかしいですが、書いたのは事実なので。

アップルの目標株価を255ドルと置いた根拠は、アップルがもはや生活必需品銘柄になっていると思ったことです。アップルの利益成長力はやや衰えているけど、スマホ(iPhone)はもはや生活必需品であり、利益安定度は抜群に高いはず。であれば、生活必需品セクターの主要銘柄であるコカ・コーラ(KO)やプロクター&ギャンブル(PG)と同じくらいに評価されても良いだろうと思いました。KO、PGの予想PERは20倍ほどあります。

PER20倍で考えると株価は255ドルになったので、「アップルの目標株価は255ドルだ!」なんて書きました。所詮素人意見ですが、別にふざけて書いたつもりは全くありません。マジです。

でも僕はちょっと過信していたのかも。

少なくとも私にとっては、スマホ(iPhone)は生活必需品です。いや通勤電車の光景を見る限り、多くの人にとってスマホは生活必需品になっていると思います。先日、中国赴任の先輩が一時帰国していたのですが、中国での生活はスマホなしでは絶対に成り立たないと言ってました。飲み会の割り勘もスマホでやるそうです。みんな、スマホを肌身離さず持っているそうで。

一つ勘違いしていたことは、スマホが生活必需品であることが重要なのではなく、アップルに安定して収入があるかどうかが重要だということです。いくらiPhoneが毎日使われていても、5年に1度しか買ってくれないなら、アップルの収入はそれほど安定しないかもしれません。

飲み物や石鹸は短いサイクルで買替需要が訪れます。私は飲み物は毎日買いますし、石鹸やシャンプーも月に1回くらいは買います。回転が早い飲料を製造販売するコカ・コーラのPL構造は非常に安定しています。じゃあ、アップルのPL構造は安定するのかしないのか、それが問題だ。

どうかな~、難しいところですが、私は多少iPhoneの買い替えサイクルが伸びたとしても、アップルの収益は比較的安定を維持できる気がします。

うちの会社は、とある政府機関に機器を販売していますが、その機械の耐用年数は約5年です。なので5年に一度しか買ってもらえません。でも、なぜかその機器の売上高は毎年安定して推移します。買い替え需要がいい按配で分散されて、結局毎年同じくらい売れます。

iPhoneもこんな感じで、買い替えサイクルが伸びたとしても総体としては収益は安定しそうな気もします。少なくとも、エクソンのように年によってEPSが大きく上下することにはならないと思います。最近はアップストアなどのサービス売上が増えており、収益安定化に貢献しています。

強い根拠は示せません。単なる直感で恐縮ですが、私はアップルの利益安定度はまあまあ高いと思います。コカ・コーラやプロクター&ギャンブルほどではないでしょうが、やはり生活必需品セクターにカテゴライズできると今でも思っています。

アップルの利益安定度は「◎」は無理でも、「〇」くらいはありそうかな。「△」や「×」とは思いません。

利益成長力はまあまあ期待できるでしょう。高価なiPhoneに手が届くようになる層はこれからグローバルで増えると思います。

ってことで、別に定量的に示せるわけでもなく個人的な直感ではありますが、アップルの予想PERが14倍というのは安いと思います。目前の株価変動は予想できませんが、長期的には十分報われる水準かなと思います。255ドルは言い過ぎだったかもしれませんが、今の170ドル割れという株価はちょっと売られ過ぎに見えます。

私は配当利回りが最低でも市場平均はないと投資しない方針です。今のアップルの利回りはS&P500とほぼ同等。一応スコープには入れてます。ビビりなのですぐに決断はできませんが、アップルも投資候補の一つです。優良銘柄だと思います。

買値がどうこうと言ってきましたが、アップルの一番の魅力はやっぱりPLとキャッシュフローの美しさですね。