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【のれん】日本株と米国株を比較するときはより一層キャッシュに注目すべきだ

      2016/10/03

会計用語に「のれん」という言葉があります。日経新聞にも詳しく解説されることがあるので、ご存知の方も多いと思います。

のれんとはM&Aで企業を買収したときに発生する勘定科目です。

買収対価と被買収企業純資産との差額です。

企業を買収する時、特別な契約がなければその企業の資産だけでなく負債も引き継ぎます。買収するとは企業のバランスシートをそのまま取り込むことを意味します。つまりその企業の純資産を買っているということです。

被買収企業の企業価値は簿価で考えると純資産です。

その純資産(簿価ベースの企業価値)と買収対価の差額が、のれんです。

例えば、こんなBSの会社があるとする。

BS

総資産が3,000億円で負債が2,000億円、差額としての純資産は1,000億円。

この企業を買収しようとした場合、普通買収金額はこの1,000億円より高くなります。純資産=株価のときPBRは1倍ということですが、PBR1倍程度の弱小企業をわざわざ買う人は普通いませんから。

仮にPBR1倍以下だっだとしても、M&Aの買収金額には一定のプレミアムを乗せるのでやはり買収金額は純資産を超過するのが普通です。

純資産1,000億円の会社の株式すべてを1,500億円で買ったとすれば、500億円ののれんが生じます。

仕訳イメージはこうです。
※あくまでイメージです、本当は複数の連結仕訳を伴います。

MA仕訳

現金1,500億円で1,000億円の純資産を買う、貸借差額がのれん500億円です。

のれんとは何でしょうか?

買収金額とは買い手がはじき出した被買収企業の企業価値(株主価値)なわけですが、なぜこの買収金額とBS純資産とは一致しないのか?

それは、バランスシートは所詮過去のキャッシュを裏付けとした取引が記帳されてきた結果の集約でしかなく、その純資産金額は何ら企業価値を表さないからです。

グーグルには大きなブランド価値や優秀な人材が大勢いますが、その価値はバランスシートには表れていません。

無形資産の価値が年々高まっていくなか、バランスシートが表現できる企業価値には限界があります。バランスシートは家計のような小さな非事業主体の経済価値を的確に表現することは可能ですが、グローバルでビジネスを展開する企業の経済価値を表現することはもはや不可能です。

例えば、ソフトバンクは英国ARM社を3.3兆円で買収すると発表しましたが、それに伴って発生するのれんは約3.0兆円と言われています。つまり、孫さんは帳簿上は0.3兆円しか価値のない会社を3.3兆円も出して買ったのです。

だからと言ってこれが必ずしも割高というわけではないのです。ARM社は帳簿上は0.3兆円の純資産しかないけど、その企業価値は3.3兆円あると孫さんは判断したわけです。

ARM社買収仕訳のイメージARMのれん


 ”のれん”の会計処理

のれんの会計処理は、日本基準と米国基準及びIFRS(国際会計基準)で大きく異なります。

総合商社等のグローバル企業を中心に日本でもIFRSの任意適用が盛んですが、それはのれんの会計処理の違いに背中を押されている面が強いのです。

日本基準ではのれんは20年以内の一定年数で償却します。減価償却のように、少しづつ費用化していって損益計算書に計上します。

対して、米国基準やIFRSではのれんは非償却です。費用化しません。
※ただし、減損はあり得ます。

のれん償却が嫌だから、IFRSを早期適用している会社は多くあります。特に競合が米国企業の場合はなおさらです。

日本基準 米国基準 IFRS
償却する 償却しない 償却しない

この差は業績の見た目にめちゃくちゃ大きな違いを与えます。のれんを償却するかしないかで、PLの最終利益は大違いです。当然償却しないほうが利益は押し上げられます。

M&Aの金額は数千億円から数兆円に上ることもあるのですから、当然のれんの金額も膨れ上がるのです。最近あった米国企業のM&Aとしては、ファイザーのメディベーション買収がありますが、この買収価額は約1.4兆円です。メディベーションは前立腺がん治療薬「イクスタンジ」を持っている会社です。

米国企業のバランスシートを見ると多額ののれんが計上されているケースがありますが、これはM&Aが活発というだけでなくのれんを償却しないという会計処理が大きく影響しています。

メドトロニック(MDT)は総資産が99,782百万USDですが、そのうちのれんが41,500百万USDです。実に総資産の半分がのれんなのです!

日本会計基準ではのれん償却するのに米国基準やIFRSではのれん償却しない、これは投資家を惑わせます。

しかも、日本株式市場は日本基準だけでなく米国基準やIFRSも認められているのです。つまり日本企業の中でも、のれんを償却している企業もあれば非償却の企業もあるのです。

もうややこしいでしょ(笑)。

ちなみにソフトバンクはIFRSなので、前述のARM社買収に伴うのれん約3.0兆円は償却しません。バランスシートに載ったままです。いつか減損になったらぞっとするね。

  キャッシュだけでいい

もうね、正直普通の個人投資家はPLは見なくてもいいくらいだと思っています。

半端な知識で日米企業のPL比較をしても混乱するだけ。

キャッシュは嘘をつきませんから。

普段からキャッシュに着目すべきですが、日米企業の比較をするときはより一層PLは見ずにキャッシュだけを見ればいいと思います。

 - 投資理論・哲学