株式市場はあらゆる情報を瞬時に織り込む効率的な場と言われます。確かにその通りだと思います。M&Aが公表されたら、あっと言う間にpre-marketの株価に反映されます(大抵、買い手の株価は下落する)。決算を公表してEPSが期待以下だと、株価はあっという間に下がります。個人投資家が先回りで売り抜けるのは先ず不可能。

ただ、株式市場も完璧、天才ってわけではありません。あくまで公開情報を瞬時に正確に吸収するだけです。非公開の情報は株価には反映されません。てか、それはインサイダー取引で法律違反ですし。

それと、マーケットは構造的な社会の変化を的確に捉える能力は高くないように見えます。未来はあくまで過去の延長と考えがち。今の米国株式市場が反映できていないと思うことが2つあります。
①低インフレが常態化する社会
②テクノロジー企業の益々の発展

①低インフレが常態化する社会

米国では長期金利が急激に低下してきました。年内の利下げもありそうな雰囲気です。昨年のタカ派から一転FRBの姿勢は軟化してきました。米10年債利回りは一時2%を割りました。

この債券市場の反応はやや行き過ぎな面もありそうですが、方向としてはまあ正しいんだろうと解釈しています。方向ってのは利回りの低下って意味です。最近の金利低下は、経済の低インフレ化を反映しているように見えます。

ただ、にしても債券利回りはあまりに下がり過ぎかも・・。まだ米国のインフレ率はまだ2%弱あります。2%の物価上昇というのはFRBの政策目標でもあります。6月27日現在の米10年債利回りは2.04%ですが、いくら低インフレが常態化すると言えども、債券はやや割高に見えます。もし年率2%デフレが訪れるなら債券はむしろ割安だと思うけど、パウエル議長がそんな事態を招くとは思えません。

一方で、株式市場はまだ低インフレ経済を完全に織り込めていないように思います。S&P500指数は3,000台を試すところまで上昇していますが、実績PERは22倍で予想PERだと18倍前後です。益回りは5%~6%。10年債利回りの2.0%より遥かに高いです。

AI、アルゴリズムの発達で労働者が不要になりコスト(人件費)が削減される。生産性向上は物価上昇を抑制します。より安く作れて安く売れるから物価は上がりづらいってことですね、簡単に言えば。

今、これだけ人手不足が騒がれる中で、そんな非労働経済の実現を信じることができるか? 確かにどうなるかわからないです。あくまで予想。だからこそ、株式市場は低インフレ経済を徐々にしか織り込めないと思います。私見ですが、今は非労働社会への過渡期だから労働市場が逼迫しているのかもしれません。

1980年代みたいにインフレ率が10%を超えるような事態にはならず、2%以下で安定推移するならば(もしかしたらもっと下がるかも?)、米国株のPERは過去平均より高くなって然るべきです。S&P500の過去の平均PERは17倍程度で益回りはおよそ6%。仮に益回りが2%下がって4%になるとしたらPERは25倍が適性値です。それはちょっと言い過ぎか。益回り1%低下くらいが妥当と考えるなら、20倍前後(益回り5%)のPERが適性値となります。

もし過去よりインフレ率が一段下がるなら、株式のPERは一段上がります。PERだけを見て株式を割高と避けてしまえば、大きな機会損失を被るかもしれません。

②テクノロジー企業のますますの発展

これは最近『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』を読んで思ったことです。テクノロジー企業はまだ発展の初期段階にいます。すでに成熟化しているように見えるアップルやシスコシステムズといった企業も、まだまだ成長の余地があります。

情報は21世紀の石油と表現されることがありますが、まさにその通りです。無料でグーグルやフェイスブックを利用し、低価格でアマゾンのサービスを利用していますが、その対価として私たちは個人情報を差し出しています。その膨大な情報が正確なアルゴリズムを生みだし、それはいつか人間の判断力を超えます。そして、いつの日か賢さで劣る人類は労働市場から退場します(する可能性があります)。それは、ある意味ではユートピアと言えます。働かなくていいわけだから。

現在の主要ハイテク企業の2019年予想PERを見てみます。

マイクロソフト(29倍)
アップル(17倍)
アルファベット(25倍)
シスコシステムズ(19倍)
インテル(11倍)
ビザ(32倍)
マスターカード(35倍)
IBM(10倍)
オラクル(14倍)
フェイスブック(27倍)
アマゾン(72倍)

個別企業の状況は色々なので、十把一絡げに断じることはできませんが、全体的に割安だと思います。少なくとも割高感はない。20年後、30年後にこれら企業の活躍の場が今より遥かに大きくなっている未来を想像するに、今のS&P500平均をやや超える程度のバリュエーションは安く見えます。ちなみに、テクノロジー・セクターETF(XLK)のPERはちょうど20倍で、配当利回りは1.3%です。

長期投資はシンプルに財務優良な企業に投資すると上手くいくことが多いですが、上記に挙げたテクノロジー企業のPLはとても力強くかつ美しいです。利益率はべらぼうに高いし、キャッシュフローも安定しています。

これらテクノロジー企業の発展を株式市場は完全には織り込めていないと思います。株式市場は非線形の社会変化を捉えるのが苦手なのかもしれません。それは多くの投資家が短期目線というのもあるし、構造的な社会の変化を予測する自信がないという理由もあるかもしれません

特に②「テクノロジー企業の発展」が狙い目かな

株式市場が織り込めていない未来社会ってことで二つ挙げました。
①低インフレ
②テクノロジーの発展

うち、①低インフレはそこそこ織り込んでいるようにも見えます。すでにS&P500指数の(実績)PERは20倍を超えていますから。より大きな投資機会は②テクノロジー企業の発展かなと思います。

どんな成長企業でも買値は常に大切です。シーゲル氏が『株式投資の未来』で語っていた「成長の罠」には気を付けなくてはなりません。が、今のテクノロジー株は「成長の罠」にハマっているようには見えません。むしろ、今世紀初頭のITバブル崩壊がまだ尾を引いており、将来の成長余地の割に株価は抑えられているように感じます。少なくとも割高には見えません。

今更ながら、テクノロジー株のポーションを増やしたいと考えています。いま一番狙っているのはシスコシステムズ(CSCO)です。最高値付近で精神的なハードルは低くありませんが、少額から買ってみようかなと検討中。でも、やっぱもうちょっと待った方がいいかな・・。そんなこと言うてる間に買いのチャンスを逃すのが、これまでのパターンなんだよなあ。

あと、、以前、別の記事で書いた記憶があるんですけど、シスコより欲しいテクノロジー株はアルファベット(GOOGL)とビザ(V)です。ただ無配もしくは低配当なんで却下してます。ずっと言ってますが、配当だけは譲れないのです。。