私は2016年より、インデックス投資から高配当米国株ないし米国ETFを中心にポートフォリオを切替えました。

投資方針を変更してよかったことは、先ず第一はより高い投資リターンを実現できそうだということです。

昔やっていたMSCIコクサイ連動等のインデックス投資戦略と、現在の米国優良企業への高配当投資戦略とで、後者が前者をアウトパフォームするかは未来が決めることではありますが、その可能性は高いと信じています。

米国株投資に方針変更して副産物的に良かった点として、数多くの米国優良企業の財務諸表を見て感動できたことです。

私は会計士としてかつては多くの日本企業の財務諸表を見ていたし、今も上場企業の経理として毎日数字と睨めっこしています。だからこそより実感しますが、米国トップ企業の損益計算書やキャッシュフロー計算書の美しさは日本企業の比ではありません。

先ず粗利率や営業利益率などの利益指標が挙げられます。粗利率50%超え、営業利益率20%超えの企業がゴロゴロ存在することに驚きました。日本がROE8%を目標にしているのが残念に思えてきます。

高い利益率以上に驚いたのが、株主還元です。

連続増配年数が30年超の企業も多く存在するし、配当利回りが5%ほどある優良企業もあります。

高い配当性向は増配余地が少ないという否定的な見方もできますが、余った金は無駄に使わず株主に誠実に返還するという、株主資本主義としてあるべき経営陣の意思を感じ取れます。

  配当性向、自社株買い性向

配当性向とは税引後利益のうち配当金として株主に支払った金額の割合です。

配当性向 = 総配当支払額 / 税引後利益

配当性向は高いほうが株主還元意識が高いという意味で好感されることもありますが、高すぎるのも問題です。配当性向が高すぎると、増配余地が限定的になり最悪減配の恐れがあるからです。

資本政策は柔軟であるべきであり時に応じて減配も必要だと思うかもしれませんが、米国の株主にとって配当金とは”基本給”に該当するもので減配は株主に嫌気されます。

基本給を下げられたら皆さんも嫌ですよね?

配当性向という言葉があるなら、自社株買い性向という言葉があってもいいのではと私は思いますが、この言葉は恐らく公式にはないと思います。今まで書籍等で見たことはありませんので。

ですが、敢えてこの記事では勝手にこの指標を作ります(笑)。

自社株買い性向= 総自社株買い金額 / 税引後利益

配当性向の分子を配当金額から自社株買いに置き換えただけです。

配当金が基本給なら自社株買いはボーナスです。

米国企業は基本給を毎年昇給させる点も株主フレンドリーですが、このボーナスの奮発っぷりの方が目立ちます。特にここ数年の低金利環境のもと、借入金して自社株買いを実施するケースが多く見られました

この自社株買い性向は高ければ高いほど、喜んでいいと思います。

最後に、これは正式なファイナンス用語ですが総還元性向という言葉があります。総還元性向とは配当性向と自社株買い性向の合計です。

総還元性向 = (総配当+総自社株買い) / 税引後利益

総還元性向 = 配当性向 + 自社株買い性向

税引後利益が100円で、配当金が30円、自社株買いが60円だとしたらこうなります。
配当性向:30%
自社株買い性向:60%
総還元性向:90%(30%+60%)

  米国株銘柄分析の記事

私はブログで「米国株銘柄分析」というジャンルを作成して、S&P100を中心に主要米国企業の財務データをご紹介しています。

で、たまに考えるときがあります、この分析記事を載せて読者の皆様に何かお役に立てているだろうか?と。

はっきり言えることは、私の記事の財務データやコメントなんかを見て投資判断をすることはまずあり得ないだろうということです。

そりゃそうですよね、皆さん自分の大切なお金を投資しようとしているわけで、素人の私の記事を見て投資判断することはないと思います(笑)。

だから、私は「米国株銘柄分析」の記事はエンターテイメントとして見て頂くものだと位置づけています。

エンターテイメントというと少し語弊があるかもしれませんが、「へーこの企業の利益すげーな!」とか「こんな会社あるんだ~」とか「この企業の自社株買いの規模すげーな!」くらいに軽い気持ちで楽しんで見て貰えれば嬉しいかなと思っています。

そして興味を持った銘柄がもしあれば、あとはご自分でモーニングスターなどの専門サイトでしっかり分析されるといいと思います。

この米国株銘柄分析記事で米国企業の自社株買いの凄さを感じとって欲しいなと思いながら記事を上げる時もよくあります。

でも伝わっているかなと不安に思うこともあるので、この場でご説明したい次第です。

上で、総還元性向=配当性向+自社株買い性向だと言いました。

つまり、自社株買い性向=総還元性向 - 配当性向 ですね。

総還元性向から配当性向を引いたものが、自社株買い性向になります。

私は米国株銘柄分析記事で総還元性向と配当性向のグラフを記載していますが、自社株買い性向のグラフは記載していません。

でも、総還元性向と配当性向の差引が自社株買い性向なのだから、実質的に自社株買い性向も載せているつもりでいます。

例えば、以下はIBMの米国株銘柄分析記事の株主還元グラフです。

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灰色の線が総還元性向で、オレンジ色の線が配当性向です。

つまり、二つの線の間(赤い矢印)が自社株買いの規模を示しています。

2014年度、IBMの配当性向は25%ほどですが総還元性向は150%ほどもあります。

つまり、自社株買い性向(赤い矢印の線)は125%(150%-25%)もあるのです。

この記事を見て思って欲しいです、「おおーIBMの自社株買いの規模すげーな!」って。

もちろんだからってIBM株を買う人はいないと思いますが、IBMという企業の株主還元意識の高さを感じて欲しいです。

同じハイテク銘柄であっても、無配のFacebookやアマゾンとここまで自社株買いをしているIBMとでは企業成長のステージが全く違うわけです。

そして、シーゲル教授の研究を信じて長期投資を実践するのであれば、無配のFacebookではなく株主還元をガンガン実施しているIBMに投資して配当再投資をするのが正解なのです。

もう一つ例を上げます。

これはベライゾンの株主還元グラフです。

VZ株主還元

グレーの線(総還元性向)とオレンジ色の線(配当性向)とがほぼ重なっていますね。
(なぜか2013年は配当性向より総還元性向が低いですが、多分私のミスですすみません。)

これが何を意味しているのか?

それはベライゾンはほとんど自社株買いを実施していないということです。

ベライゾンは一般的に高配当銘柄として有名で、私も最近購入しました

確かにベライゾンは高配当なのですが、最近は自社株買いがほぼゼロである点は覚えておいてもいいかもしれません。配当利回りだけを見ればベライゾンを超える銘柄はAT&Tなど一部に限られますが、自社株買い利回りまで加味すればその限りではないはずです。

2017年も米国株銘柄分析記事は財務データのアップデートはもちろん、追加の情報も載せて少しづつ改良したいと思っています。

米国株投資の”エンターテイメント”として皆さまにご覧頂けば幸いです。

米国株銘柄分析