米国企業の経営者及び投資家は、無配ステージと有配ステージを明確に区別しています。

無配の成長ステージは競争優位を作り上げるための投資期間です。最初は赤字決算も許容されます。EVのテスラなんて利益はマイナスなのに時価総額は6兆円もあります。無配期間はとにかく投資投資投資です。もちろん採算性のない投資にまで金を回すことは許されませんが、短期的なリターンがない投資でも長期で回収できるならOKとされます。

一方で、配当を出し始めると株主還元と成長投資のバランス感覚が求められます。一度配当を出し始めるとよほどのことがない限り無配には戻りません。無配の成長ステージで築き上げた「金の生る木」から存分にキャッシュを稼いで、それを株主に配当として還元するとともに将来への投資に回します。

無配→有配という流れは基本的に不可逆です。別に法律的に不可逆というわけではないのですが、文化的な不可逆性があります。

無配企業がいつ有配企業になるか注目しています。あまり細かく予測しても意味はありませんが、ざっくりと予測する術はあります。PERを見ることす。無配企業は成長を続けているのでPERは高い傾向にありますが、それも企業によってまちまちです。

PERが高い企業ほどまだ無配期間が長いと考えられます。
PERが低い企業ほど配当を出し始めるのが近い可能性が高いです。

 

PERだけで判断すれば、もっとも早く配当を出しそうなのはフェイスブック

主要な無配企業であるFANGのPERを見てみましょう。
FANGとは米国の巨大ネット企業のことで、
F(フェイスブック)
A(アマゾン)
N(ネットフリックス)
G(グーグル(アルファベット))
を指します。

PERが高い順にFANGを並べてみます。

アマゾン(237倍)
ネットフリックス(218倍)
アルファベット(59倍)
フェイスブック(34倍)

単純にPERだけで判断するのは安易かもしれませんが、ざっくり言えば上から順に配当を出すまでの期間が長くなりそうです。PERが一番低いフェイスブックが、この中ではもっとも早く配当を出し始めるかもしれません。そう言えば、1月のバロンズに「フェイスブックはそろそろ配当を出すかも」という記事がありました。確かにフェイスブックは、PERで見ればそろそろ利益成長が鈍化して有配になってもおかしくありません。

PERって今の利益に対して株価が何倍で取引されているかを示している指標です。

今の利益(EPS)が100でPERが200倍なら株価は20,000円(100円×200)です。

PERが高いってことは、今現在の利益に対して株価が高いということです。
なんでそんな高い株価で取引されるのでしょうか?
なんで利益の200倍以上の株価でもアマゾン株を買おうとする投資家がいるのでしょうか?

それは、将来の利益が今の利益の何倍、いや何十倍にも拡大すると期待されているからです。つまり、高PERの企業はそれだけ利益成長期待が高いということです。PERが200倍を超えるなんていうのは、メチャクチャ高い期待がかかっている証拠です。

それだけの成長期待に応えるためには悠長に配当を払っている暇はありません。本業で稼いだ利益にプラスして銀行借入や社債発行などの負債も活用して、ガンガン投資しまくらないとそれだけの高PER(=高い利益成長期待)に応えることはできません。

PERが100倍~200倍になっているような企業は、当面は配当を出す可能性は低いでしょう。PER200倍を超えるアマゾンとネットフリックスはまだ無配期間が続きそうです。ネットフリックスは自社で優良なコンテンツを作成するために莫大な投資をしています。著名なプロデューサーを数億ドル単位の契約金で招いているようです。

PER59倍のアルファベット(グーグル)はどうでしょうかね、まだ10年くらいは無配が続きそうな感じですかね~。ネット広告事業はすでにエコノミック・モート(経済的な濠)を作り終わった感があるでしょうか。といっても最近はアマゾンもネット広告事業に参入しておりグーグルの脅威になっています。あと、クラウド事業への投資はまだ続きそうです。アマゾンのAWSやマイクロソフトのAzureにシェアで負けないためには、継続的な投資が必要です。クラウド事業ではアルファベットは上記2社の後塵を拝しています。アマゾンが圧倒的トップで売上高は175億ドル、マイクロソフトが50億ドル強、アルファベットが推定40億ドルほどです。

そして、PER34倍のフェイスブックはもうそろそろ配当を出し始めるかもしれません。具体的な年数は分かりませんが、う~ん5年以内くらいにはあり得るかもしれません。バロンズは早ければ2019年にも配当を始めるだろうと言ってましたね、確か。

 

いつかFANGに投資する日が来るかもしれない

私は配当を出している銘柄にしか投資しない方針で、その中でも配当利回りが高い優良企業を好んでいます。なので、FANGは一つも持っていません。

FANGの中で特に有望だと思っているのが、アマゾンとアルファベットです。この2社が配当を出し始めたらいつかポートフォリオに加えるかもしれません。まあ最初は配当利回りも低いでしょうから、なかなか手が出ない気はしますがね。

アマゾンもアルファベットもいずれ莫大な配当を出すことは間違いありません。2018年現在、もっとも配当総額が大きい企業はエクソンモービルとマイクロソフトで、年間100億ドル以上に達しています。いずれ、アマゾンやアルファベットが配当総額世界トップの企業になるんだろうな~と思います。そんな未来を勝手に想像しています。

30年後の僕のポートフォリオに、アマゾンとアルファベットが入っている可能性は十分あります。