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2017年米国企業の自社株買いが減る要因と増える要因、で結局どうなるのか?

      2016/12/26

2008年の金融危機が起きる前は、米国債10年物利回りは5%弱もありました。それが金融危機以降はFRBの金融緩和政策の結果、途中上下しながらも10年国債利回りは一貫して下落してきました。

つまり債券価格は上昇し続けてきたということです。

2016年7月に米国債10年の利回りは史上最低の1.375%を記録して底を打ちました。そのあとは、トランプ候補当選をきっかけとして、債券利回りは急上昇しています。

トランプ候補当選で債券が売られているのは、減税や規制緩和、インフラ投資政策で経済が過熱してインフレ率が上昇するのではとの思惑、また財政悪化による米国債信用リスクの上昇を織り込んでの結果です。

2007年1月から直近までの米国債10年物利回り推移です。

この10年、金利は低下し続けてきたことがわかります。最近大きく反発しているのは上で述べたとおりです。

この低金利を活かして、米国の大企業は多額の自社株買いを実施してきました。

低金利環境では、企業は借金をしてでも自社株買いをすることが有利だと考えます。有利とは株主価値向上に寄与するという意味です。

なぜかというと、金利が低いということは負債コストが低いということであり、バランスシートの右側に占める負債の比率を上げて、純資産の比率を下げたほうが、資本調達コスト(WACC)が低くなるからです。

以下は、私が勝手にピックした自社株買いに積極的な米国企業の2010年からの自社株買い利回りです。自社株買い利回りとは、配当利回りの自社株買い版だと考えて下さい。

(単位:%) 10 11 12 13 14 15
PM 4.6 4.0 4.7 4.7 3.6 0.6
IBM 6.4 5.6 4.9 5.0 11.7 2.7
MCD 3.4 3.5 3.0 1.7 2.9 5.3
XOM 3.3 5.2 5.4 4.1 3.4 2.0

非常に高い数字が並んでいます。

一般的に配当利回りは高くても4~5%ほどですが、機動的柔軟的に実施できる自社株買いは期間によっては10%を超える利回りの時もあります。

2017年もこの自社株買いの大盤振る舞いは続くのか?

いや、2017年はちょっと厳しいと思われ、自社株買いボーナス期間は2016年で終わりだと思っています。ただし、2017年も自社株買いが増えるかもしれない要因もあります。


  2017年の自社株買い予想

減る要因 金利上昇

2017年米国企業の自社株買いが減る一番の要因は金利の上昇です(10年国債利回りの上昇)。

今まで、借金をしてまで自社株買いをしてきたのは最適資本構成の調整のためでした。よりコストの安い負債を増やして、相対的に高コストなエクイティを減らそうという企業の資本政策が背景にあります。

負債とはつまり銀行からの借金であるため、資本とは違い返済する必要があります。当たり前ですが。。

負債を増やすことは確かに資本コストの下落に寄与しますが、その分企業の資金繰りは厳しくなります。資金ショートのリスクは高まります。

資金繰りがあまりに厳しくなりすぎると「この会社危ないんじゃないか?ホントに大丈夫か?」と投資家から思われてしまい、逆にエクイティコスト(株主のリスク認識)が上昇して資本コストが上昇するという事態になります。

徒に負債を増やせばいいわけではありません。

負債の低コストというメリットと、負債の要返済性というデメリットとを天秤にかけて企業のCFOは自社の最適資本構成を判断しています。

2016年までは低金利の恩恵があまりに大きかったので、資金繰りの困難性というデメリットを許容してまで借金をする意味があったということ。

では、2017年はどうでしょう。現在米国債の利回りは2.6%近くまで上昇してきています。

某アナリストは今後、米国債利回りは5%を超えるまで上昇する可能性があるとさえ言っています。未来はわかりませんが。

このような金利環境になれば、追加で借金をしてまで自社株買いをすることは合理的な判断ではなくなります。

つまり、2017年の自社株買いは本業での営業キャッシュのみがその原資になることが想定されるということです。

米国金利(国債利回り)が上昇を続けるのか、それともトランプ効果は期待だけで終わり以前の2%未満の水準に戻るのか将来はわかりませんが、10年国債利回りが今の2%半ばを超える水準を維持するのであれば、2017年にも今までのような自社株買い大還元ボーナスを期待するのは難しいと思います。

増える要因 税制

米国企業はグローバルでビジネスを展開する企業が多いですが、企業が海外で稼いだ利益は本国アメリカに送金しない限り課税されません。

一旦送金してしまうと、35%もの高い税率が課せられます。なので合理的なグローバル企業は資金を海外に置いたままにするか、海外で再投資します。

トランプ次期大統領は、この本国送還利益に対する税率を一時的に10%にすると言っています。

そうなれば、この機会に海外に溜めていた資金を米国に送金しようと思う株主・経営者も増えます。現在、米国企業が海外に保留している資金は2兆4000億ドルもあると言われています。

このような大量の資金を低税率のチャンスだ!と思って本国に送金したはいいけど、そんな大金使い道がないわけです。羨ましい話ですが。

資金使途がないのに無駄にバランスシートに資金を置いておいても仕方ないので、株主に返還しようと普通の経営者は考えます。そもそも米国では大量の資金を無駄に社内に置いていたら株主から圧力が掛かります。

海外に大量の資金を溜め込んでいる企業を列挙すれば、アップル、マイクロソフト、ファイザー、GE、エクソン・モービルなどがあります。

これらの銘柄(主にハイテクとヘルスケア)は金利上昇という逆風に負けることなく、2017年も多額の自社株買いボーナスを株主にプレゼントしてくれるかもしれません。

ところで、企業が大量の資金を本国送還すればさらなるドル高になると主張する人がいます。米国に送金するんだからドルを買う必要があるからというのが根拠です。

しかし、私はその意見には与しません。なぜなら優秀な米国大企業のCFOがそんな大量の資金を為替リスクを負ったままの状態で放置するとは思えないからです。

何らかの為替ヘッジをしていると考えるのが自然だし、そもそもドルで保有している分もあるでしょう。米国外に資金があるからと言ってその資金がドルでない理由はありません。

 

で、結局どうなの → 減ると思います

個人的な意見ですが、やはり2017年に米国企業の自社株買いは減ると思います。期待は低く持っておいた方が、サプライズも嬉しいですしね!

本国送金の税率負担軽減は、効果は限定的かもしれません。なぜなら、米国のグローバル大企業は様々な税務戦略を駆使してすでにその負担税率は低いからです。

アルファベットは20%弱、アップルは25%前後、マイクロソフトは20%前後。各企業の実際の税負担率です。米国の実効法人税率は35%にも関わらず。

「ダブル・アイリッシュ、ダッチ・サンドウィッチ」という言葉を聞いたことありますか?

私も詳しくは知らないのですが、アップルなどが採用している有名な節税スキームです。

すでに税負担率が低い米国大企業(特にハイテク)にとって、税率を10%にしてもらっても実はそれほど恩恵は感じないかもしれません。すでに税率が低いからです。

政府が思うほど、本国への利益送還は進まない可能性があります。

2017年、あなたの持ち株でも自社株買いは過去に比べて著しく減少することが予想されますが、それでも心配は無用です。

配当政策や自社株買い政策は、本来的には最適資本構成の議論とセットであるべきです。

あなたが株を保有している米国優良企業には間違いなく優秀なCFOが在籍しています。彼らに難しい資本政策は一任していればいいんです。というか一任せざるを得ないですが。

そのための高額なCFO報酬です。S&P500構成企業の平均CFO報酬は380万ドル(約4.5億円)です。ちなみに、2015年のCFO報酬最高額はグーグルのパトリック・ピチェットCFOで4380万ドル(約51億円)です(現在は退任)。

彼らが最適資本構成を適切に考えた結果、2017年は自社株買いが減るだけであって、米国企業の株主還元姿勢に揺るぎがあるわけでありません。

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