お金は額に汗して稼ぐもの。株式投資で不労収入を稼ぐなんてけしからん、ずるいという人も世の中には大勢いるようです。
そんな日本でも、最近は若い人を中心に「貯蓄から投資」が少しずつ進みつつあるように見えます。
ネット証券で手軽に低コストで投資できるようになった環境の変化、同じくネット環境の充実によって個人投資家に必要な情報が容易に入手できるようになったことが、多くの人々の投資マインドを促進させているのではないかと思います。
資本主義の世の中にタダ飯・フリーランチは存在しません。
サラリーマンで月収30万円稼ごうと思ったら大変です。社会人の方ならわかるはずです。
お金を稼ぐことは大変です、使うのは簡単なんですがね。
仕事を通して社会に世の中に価値を提供して、その見返りとしてお給料を貰えます。
職業に貴賤はありません。
誠実なビジネスで持続的に収益を上げているということは、その会社は社会に必要とされていることの証であり、そこの会社で働いている人の頑張りが社会に認められているということです。
株式投資の意義 3ステップ
株式投資をすれば配当金や値上がり益といった利益を得ることができます。もちろん損する可能性もありますが、長期で世界の株式に投資をしていれば過去もそして恐らくこれからも一定の利益を得ることができます。では、なぜ株式を保有していれば利益を得ることができるのでしょうか。繰り返しになりますが、世の中フリーランチはありません。株式投資も投資家が社会に何かを提供しているから、その見返りとして長期的には利益を得ることができています。
株式投資の意味って何なのか考えてみました。個人的な見解で恐縮ですが、株式投資の本質的な意義に至るまで3ステップある気がしています。
①株式投資はギャンブルだ
株式投資は株価を使ったギャンブルだという発想が最も低層な発想です。株価は毎日大きく変動しますし、ニュースや新聞といったメディアも記事を埋めるためにその日の株価変動の要因をああだこうだ言って掲載するので、自然とそのようなニュースを目にする機会は多いはずです。そして、中国不安だの円安だので株が上がった・下がったとかよくわからないし、株なんてギャンブルや、自分には関係ないとなるパターンです。
今考えると株式投資がギャンブルなんて発想あり得ないと思えますが、このように考える人が多く存在することは非難できないと思っています。私も恥ずかしながら、社会人になるまで株はギャンブルと思っていました。社会人になって仕事をし、何より多くの書籍から学ぶことによって株式投資の意味が少しずつ理解できるようになりました。
私は公認会計士として大学卒業後に監査法人に就職しました。監査法人は企業の決算書の適切さを担保する証券市場の番人としての役割を担っています。そのような立場でありながら、就職当初は株式投資の意味すら理解できていなかったというのは本当に恥ずかしい限りです。
ただ、言い訳がましいですが、今の日本の教育カリキュラムでは資本主義の仕組みや株式投資の意義を学生の間に完全に理解することは困難だと思います。私は経済学部でしかも会計士試験の勉強もしていたので、株式投資については相対的に知るチャンスがあったほうだと思います。まあ私が勉強不足なだけの可能性も十二分にあるのですが、在学中に知ることはできず、就職してから自学で習得しました。
株式投資家は資本主義社会ではなくてはならない存在です。株式投資はゼロサムの投機ではなくプラスサムの投資です。株式投資はギャンブルではありません。ギャンブルと誤解してしまうことが株式投資の理解度として最低ランクですが、そのように理解してしまうことは仕方ない面もあります。
②株式投資は企業に資本を提供している
実際に株式投資を行って長期保有しようと思った人が、株式投資はギャンブルというステップを超えて次に実感するのがこの資本を提供しているという感覚ではないでしょうか。株式投資を通じて企業に資金を提供している。企業はその資金を使用して工場を建設して、製品を製造販売している。株主はそのための資金提供を通して社会に貢献していると。
これは、正しい主張なのですが株式の根本的な意義を欠いていると思います。それは負債と資本の違いが明確になっていない点です。資金を提供するのは何も株主でなくても社債保有者や銀行でもいいのです。資金を提供しているという意味では、債券投資家、銀行も株式投資家も違いはありません。さらに言えば、通常我々が株式を購入するのは発行市場ではなく、流通市場なので、株式発行に伴う会社への資金流入はとうの昔に終えている可能性が高いです。
負債と資本の違い、という点まで言及することで③に進みます。
③株式投資は企業のビジネスリスクを負担している
株式投資家はその出資額を限度とはしますが、投資先企業のビジネスリスクを負担しています。これが株式投資家が社会に提供している最も肝要な役割です。株式投資家はこのリスク負担を提供しているため、そのリスクに見合ったリターン(利益)を得ることができます。リスクを負担しているとは有体に言ってしまえば、会社の業績が悪くなれば株価下落で損失を被るし、会社が倒産してしまえば株式はただの紙くずになって全額損失になるということです。債券保有者や銀行は、貸付先企業の業績如何に関わらず定額のクーポン収入を得ることができます。
株式投資家がリスクを負担という役割を担っていることは、なかなか実感することがありません。それは世の中当たり前のように企業が製品やサービスを提供して、人々はそれらを消費して人生を楽しく快適に過ごせているのですが、その背後にいる株主の姿は見えにくいからです。少なくとも物理的には見えません。
株主は会社の利益の配分を受けるのが最も遅い存在です。企業は稼いだ売上高について、従業員に給料を支払い、債権者に利子等を支払い、地主に地代を払います。そして最後に残った利益が株主に帰属します。会社に利益に残っていなくても基本的に株主は文句を言えません、逆に儲かって多額の利益が残ればそれはすべて株主のものです。だから、株式投資は債券投資よりもハイリスクなのです。
資本主義社会で世の中の財・サービスの大半を株式会社が生み出している以上、その株式会社のリスクの担い手すなわち株主が必要です。今世の中で生きている人の中で誰かが必ず株主になってリスクをとらなくてはならないのです。誰もリスクをとらないと言い出したら株が売られて株価が下がります。株価が下がったにも関わらず誰もリスクをとらない(株を買わない)と言ったらどうなるでしょうか?
それが実際に起こったのがリーマンショックに端を発した金融危機でした。金融危機の時、また次の金融機関が潰れるのではないか、多くの人が将来を悲観し先行きが見通せなくなりリスクを回避しました。誰もリスクをとりたがらない状態とはリーマンショックの時と考えると、それがどれだけ大変かわかると思います。なお、リーマンショックの時でさえ株価が大幅に下落したとはいえ、株価が付いたという事は誰かがリスクをとった(主にアメリカ政府ですが。)ということです。株価が大幅下落すると皆慌てますが、株価が付いているということは誰かが株を買ってリスク負担を申し出ているわけで、ある意味安心と言えます。本当に誰一人株式を買わない(リスクを負担したくない)と言い出したら、その時は資本主義社会崩壊の時でしょう。もう現代のように豊かに生活できる環境は失われるでしょう。
株式投資は立派な社会貢献
株式投資家は単にお金を会社に提供しているだけでなく、株式会社のビジネスリスクを負担しているという資本主義社会の根幹となる役割を担っています。株式を保有している人は、その事実を是非しっかり理解し、ありがたくそして自信を持って利益を得てほしいと思います。
もうすぐ社会人になる24歳大学院生です。株を始めようと思ってネットで調べているとこの記事にたどり着きました。質問にお答えいただければ嬉しく思います。
株式投資は企業のビジネスリスクを負担しているとありますが、それも株の発行市場の話になるのではないでしょうか。
個人的に株式投資は以下のような役割があるのかなと思います。
流通市場の株の売買を行い、株の流動性を高めることで、株式投資をのリスクが軽減され、株の購入のハードルが低くなる。それによって企業は資金を集めやすくなり、民間企業の発展が促される。
はじめまして、ご質問ありがとうございます。
オディ様が抱いている疑問は非常に共感できます!
私も株式投資の意義や、株式の本質について色々と悩み考えた過去があります。
さて、ご質問の件ですが、私は株主投資の意義はビジネスの負担だと申し上げましたが、これは発行市場であれ流通市場であれ変わらないと考えています。
確かに、オディ様が仰る通り株を売買することで市場に流動性をもたらすることで社会に一定の価値を生むという側面はあると思います。
しかし、これは短期的なトレードの社会的意義かなと考えています。
短期的な株式の売買はゼロサムゲームであり一般的には社会的な付加価値を創出しません。
Aさんが100万円儲かったとしたら、その裏には100万円損をしたBさんがいます。
短期的な株式の売買による利益とはちょっと悪い言い方をすれば富の収奪であり、みんなで豊かになろう!パイを大きくしよう!という発想がありません。
だからと言って短期取引が否定されるものではありません。一定のルールに則って取引する以上、損をしても恨みっこなしです。
短期取引は富の移転に過ぎないので社会的な価値の創出はないように見えるのですが、唯一あるのがオディ様が仰る市場への流動性供給です。
私の様な長期投資家が好きなときに市場価格で購入売却できるのは、市場に流動性をもたらしている短期トレーダーのおかげです。
一方で長期で株式を保有するとは(長期の定義は曖昧ですが)、ゼロサムゲームの富の収奪で儲けようという発想ではありません。
経済の成長、企業の利益成長の拡大に伴って、みんなでお金持ちになろうという発想です。
パイを奪い合うのではなく、パイ自体を大きくしようという発想です。
長期株式投資でそのパイの拡大の恩恵を株主が受けれるのは、やはり株式を保有して企業のビジネスリスクを負担しているからです。
市場に流動性をもたらしたから、配当金を得られるわけではありません。
発行市場と流通市場とを分けてお考えのその発想は素晴らしいと思います。
そこを理解していない人も多くいると思いますので。
ただ、発行市場であれ流通市場であれ株式を保有することの意義、本質は変わらないと考えます。
発行市場と流通市場とは、株主のキャッシュが直接企業に入るか否かの違いでしかありません。
初期の出資メンバーか途中参加の出資メンバーかの違いです。
初期メンバーでも、中途メンバーでも、同じビジネスリスクを背負った株主であることに何ら変わりはありません。
株式投資の意義を区分するとしたら、発行市場か流通市場かではなく、長期か短期かになるだろうというのは持論です。
短期投資の意義・・・市場への流動性の供給
長期投資の意義・・・企業のビジネスリスクの負担
いかがでしょうか?
これは私の意見に過ぎないので、何が正解かはないかもしれません。
オディ様は24歳の大学院生とのことで、学生さんでここまで深く考えていらっしゃるのは素直に凄いと思いました。
私も投資に興味を持ち始めたのは同じ24歳ころでしたが、その時は社会人でしたから。
24歳から株式投資に興味を持たれて、実践されるのは大きなアドバンテージだと思います。
早く始めた方が複利の恩恵を受けやすいです。
株式投資を続けるうえで、「株式投資で得られる利益の本質」とは何かを考えておくことは有意義です。
そういった自分なりの強固な思想というか信念があれば、暴落などにも動じることなく長期株式投資を続けることができます。
私は自分の考えが常に正しいなどと傲慢なことは思っておりません。
ただ、上記が私の考えであり、今のオディ様の考えとはやや異なります。
それは決してオディ様のお考えが間違っているとか、そういう意味ではありません。
私の考えもご参考にしながら、是非自分なりの答えを見つけられるとよろしいかと思います。
もし追加でご質問あれば、遠慮なくコメント下さいね。
では、長くなりましたがこの辺で失礼します。
21歳学生です
この記事でずっともやもやしているものがすっきりしました
分散した長期投資は経済成長にあやかって資産を大きくできるという理屈は分かっていたのですが、なぜそれが株式の保有によって実現されるのかが分からずにいました
ずっと投資を続けていくには自分の中で納得すること
は非常に大切なことだと思います
これで自信を持って積立てていけそうです
ありがとうございます
コメントありがとうございます。
株を買うって、表面的にはネット証券でクリックするだけです。汗一滴もかきません。
なんでそうやって簡単に株を買って保有するだけで、長期的に利益が得られるのか普通に不思議な感じがしますよね。
株式を買うということは企業のオーナーになるということです。
「常に株券ではなく、ビジネスを買うという投資姿勢が必要です。」(ウォーレン・バフェット)
「投資に際して大切なのは、ビジネスそのものです。」(ウォーレン・バフェット)
「注目すべきは、株価ではなく、事業そのものでなくてはなりません。」(ウォーレン・バフェット)
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こういったバフェットの言葉をきちんと腑に落ちるまで理解すれば、株式投資の利益の源泉が段々と見えてくると思います。
株価に目が行ってしまうのは当然ではありますが、やはり最後はビジネスです。それは会計的に言えば利益であり配当です。
おっしゃる通り、自分の中で納得することはとても大切ですね。
知識・理解に基づく納得感があれば、ちょっとした暴落でビビることもなくなります。
長期投資は簡単に見えて結構難しいです。気合と根性だけでなく、冷静な理解・知識も必要です。
投資がんばって下さい!
まだお若くて羨ましいです。
こんばんは
Hiroさんのブログは、投資にまつわる実務も……実は深い哲学的なところが好きです。
株式投資で得られる利益の本質……私は未来の時間を買っている……と、漠然に日々感じてます。
仕事は欧米の外資系で長く働いてますが……頭を悩ますのが若手達が、来年の売り上げ予算を練る際に…こんな成長率無理!……と大声で叫んでいる時。
そんな時は、10%成長は一年の売り上げを10ヶ月で達成して……残りの余った2ヶ月を将来を楽にする時間に当てるのと同じ意味だよ……と、酒を飲む時に言ってきかせます。
投資している企業が昨年の売り上げを今年半年で達成し、後半も売り上げを伸ばしたら……凄い成長ですよね。経理的に正しいか分かりませんが、たぶん成長し利益を上げる会社は売り上げ金額の他に時間にも余裕を同時に生み出していると感じます。
この余裕の時間が成長や利益の、原資になるんじゃないかなぁ……こんな風に考えます。
この企業の成長で生まれる余裕時間が、金額に換算すると投資家のインカムやキャピタルの成長の源となる気がしてます。
企業が未来に創出する時間に、今日投資する……これが正しいなら、資産運用にロマンが出てきそうです。
会計的な素養が無いので、駄文を失礼しました
こんばんは。
>株式投資で得られる利益の本質……私は未来の時間を買っている・・
そこは本質ですね。
株式投資の利益の源泉はリスクだと今でも思っていますが、そうではない面もある気がしてます。
それが「時間」です。待つこと、耐えること。精神力です。
そもそもS&P500指数への投資に本当にリスクってあるだろうか?って思うことがあります。
アップル、マイクロソフト、アマゾン、ジョンソン&ジョンソン、フェイスブック、グーグル、JPモルガン、ウォルマート、ビザ、インテル、こういった名立たる名門企業の集合体であるS&P500指数構成企業が長期的に利益を上げれない、なんてことはあり得ないと思います。
あるとしたら、それこそ資本主義経済崩壊の時です。
短期的な株価変動は免れませんが、S&P500に長期投資してリターンを得られないなんてことは99.9%ないと私は考えています。
ただ、だからと言ってS&P500への長期投資が簡単な事と言うつもりはありません。
辛抱強く待つことは誰でもできることではないからです。
バフェットが言う通り「ゆっくりお金持ちになりたい人なんていない」わけです。
株式投資の利益の源泉はリスクですが、優良株、ブルーチップへの投資の利益の源泉は「時間」なのかもしれません。
ちょっとYabochanさんが意図してらっしゃることと異なる解釈かもしませんが、私も「時間」は長期投資のキーワードだと思っています。
私はその時間を待っているようで、実は待てていません。早くキャッシュが欲しいと思ってしまいます・・。
それが私が高配当株に投資する理由の一つです。
時間は有限で、いつ急に人生終わるかもわかりませんから、利益を永遠の未来に留保して時間を捧げ続けることに抵抗を感じています。
その辺の落とし所は人それぞれですね。答えはありません。
どんな方法にしろ、お金を稼ぐのは簡単ではないな~と感じる次第です。
株価は長期的には右肩上がりです。特に米株は。
健全な楽観思考で気楽に楽しく個人投資家らしくやっていきたいです。