うちの経理部の仕事の一環として、海外子会社の社員の昇給率をウォッチするというのがあります。北米、中南米、アジア、欧州、中東と世界中に子会社があります。

うちの会社は、海外子会社の給料体系、人事評価制度は日本本社と全然違います。基本的に現地の文化、考えを尊重しています。

ただ、完全放置もまずいだろうということで、一応日本本社の人事部、経理部で海外子会社の昇級率をチェックするプロセスが毎年あります。各子会社に一般社員と管理職の昇給率をエクセルで提出させて、非合理な昇給がないかチェックします。

私もチェック担当者として駆り出されまして、色んな国の子会社の昇給率を見ていました。

そこで一つ目に付いた国がありました。アルゼンチンです。
アルゼンチン子会社(販売拠点)の従業員の昇給率はなんと25%もあったのです。

「んん、これはちょっと給料上げ過ぎじゃないか(羨ましいなあ)。なんでこんなに貰えるんだろ?業績良かったのかな?」とか考えてました。サラリーマンで年次昇給率が25%なんて超良いですよね。普通の日本の会社じゃあり得ない。管理職に昇格したって、そこまで上がらん気がします。

で、不思議に思ったんで人事部に報告したんです。

「新井さん(海外人事担当)、アルゼンチン拠点の昇給率が高過ぎると思います。25%も上がってますよ。」と

そしたら、新井さんはこう言うんです。

「ああ、大丈夫。アルゼンチンはインフレ率が高いからそんなもんよ。」

・・・

は!、なるほど!!

ググってアルゼンチンのインフレ率を調べると、なんと昇給率と同じ25%だったんです。

世界経済のネタ帳より)

つまり、アルゼンチン拠点の社員の実質昇給はゼロということです。名目賃金が25%上がっても、物価も25%上昇すれば、購買力は上がりません。

なるほど、、インフレ率と比較するという観点が大切なのか。先に言って欲しかったわ。

んで、アルゼンチン以外の拠点も昇給率とインフレ率とを比較してたんです。そしたら驚くべきことに、ほぼすべての海外子会社の昇給率はその国のインフレ率と近似していたのです。

最初は、「どこの国の拠点も日本人よりも昇給率が高くて羨ましいな~」と思っていましたが、それは僕の勘違いでした。慢性的に低インフレな日本では名目賃金上昇率が低くてもそれほど困りませんが、アジア新興国や中南米諸国は、日本よりもインフレ率が高いので名目の賃金上昇率が低いと実質減給になります。せめてインフレ分くらいの昇給は確保しないとさすがに従業員は怒るでしょう。

インフレ加味してもしっかり昇給していたのは米国子会社くらいでした。米国以外は実質昇給率はかなり低かったです。世知辛いね~。なんだか寂しい気分になりました。

サラリーマンがしんどいのは世界共通なんだな~と思わされた出来事でした。