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【投資リターンが上がる裏話】理論より感情が優先される現実

   

ファイナンスという立派な学問があります。

将来キャッシュフローを現在価値に割り引いてNPV(正味現在価値)を算出する。NPVがプラスだったらその投資はGOだ。

IRR(内部収益率)を算出する。IRRとはその投資の収益率のことだと思ってください。IRRが資本コスト(WACC)より高ければ投資はGOだ。

ファイナンス理論のいいところはすべてキャッシュベースで考えるところです。キャッシュで考えるので会計手法の違いに影響を受けないです。

会計処理が変更になった時に、「これは投資評価にどう影響するんだ!?」って事業部の偉い人からたまに質問される時がありますけど、会計処理が変わっても投資評価は変わりません。だって会計は単なる物差しですから。会計が変わっても将来のキャッシュには何ら影響はしないです。

細かい方法の違いはあれど、すべての企業は設備投資やM&Aの意思決定を行う時に必ずNPVやIRRを計算して投資評価をします。これを実施しない企業は恐らくないはずです。

そりゃそうです。

株式会社経営の目的とは株主から預かっている数千億円の経営資源を適切に投資し、時には還元して株主価値を最大化することです。

数百億円規模の工場建設や企業買収を実施するのに、その投資評価を事前に行わないのはもはや経営者として善管注意義務違反で民法違反だとさえ言えるくらいです。ちなみに、私の会社ではエクセルシートでNPVとIRRを計算してそれを経営委員会なる部署に上申します。

そうなんです、株式投資家の皆さんの大切なお金はファイナンス理論によって計算された投資効率の良い案件のみに投資されて適切に収益を生んでいる、、はずなのです。

はずなのですが、、

本当にそう思いますか?

本当にすべて経済合理的に投資意思決定されていると思いますか?

ごめんなさい、株主であるあなたのお金は結構無駄に使われていることがあります。


  感情で意思決定 経営者も人間

本当にファイナンス理論が正しいと思いますか?

いや、質問がおかしいな。

ファイナンス理論は正しいです。理論としては正しい。

本当にファイナンス理論を使って正しい、株主利益に貢献する真っ当な経営意思決定ができていると思いますか?

残念ながらそんなことはありません。これは私が監査法人、事業会社の本社管理部門として8年経験してきた実務からはっきり言えることです。(たったの8年ですが。)

ファイナンス理論のいいところは会計手法に依存しない点だと言いました。でもファイナンス理論にも欠点があります。大きな欠点があります。

それは、将来の見通しや経済環境の見通しといった不確実性が必ず介入することです。

将来キャッシュを予想するって簡単に言うけど、本当にそんなことできるの?

この会社は10年間で約5%の利益成長が見込めるので素晴らしいM&A案件です。また我が社とのシナジーを考えれば7%のCAGRも可能です!とか言うけど、シナジーって何?、本当にそのシナジーって可能なの?

その10年後もあなたはこの事業の責任者なのですか!?適当なこと言ってませんか!?

事業のリスクを考えれば割引率は8%が適切です。
本当に8%でいいの?、その根拠は?、投資銀行が提示する割引率をただ使っているだけでは?

将来CFの成長率を1%変えるだけで、割引率(WACC)を0.5%変えるだけで、投資評価は大違いです。割引率8%だと正味現在価値はマイナスだけど、7%にしたらプラスになってOKとか往々にしてあることです。

ファイナンス理論での投資評価なんて正直言ってどうにでも操作できます。

だからと言ってファイナンス理論が不要と言いたいわけではありません。操作可能と言っても、誰が見ても明らかに収支がマイナスな投資案件についてはファイナンス理論でその投資が誤りだと示せます。

でも、そんな誰が見ても損する投資案件なんて初めっから議論の俎上に上がりません。議論になるのは、投資すべきか止めるべきかギリギリの投資案件です。

そんな不確実性、主観的な将来の見通しに左右される投資意思決定で最も優先される要素は何か、それは感情です。

やはり結局人間が経営している以上感情というものが最も先にくるのです。

社長が「このM&Aは何としても成功させる!!」と言えばもう実行することになるのです。そのM&Aも当然ファイナンス理論で投資評価するのですが、その投資評価でNPVがマイナスになるようなワークシートは誰も作りません。

シナジーとか言って将来の成長率を高く見積もり、また事業リスクは低いとかインフレを織り込むどうこう言って割引率を引き下げて、意地でもNPVを正にして投資OKとするのです。

ある事業本部長が「メキシコに工場を設立する!」と決断したら(もちろんそんな突飛に判断するのではなく、事前に幹部間で綿密な経済計算があるはずですが)、これも実行するのです。そのメキシコ工場設立のNPVやIRRは当然計算するのですが、そんなのある意味後付けです。そのファイナンス評価で投資案件をNOにすることは滅多にあるものではありません。

ファイナンス理論で経営意思決定しているなんて思ったら大間違いです。

理論で経営しているように見えて、実際は感情で意思決定してファイナンス理論で正当化すると言ったほうが自然だと思います。

M&Aの8割は失敗だと言われます。なぜそんなに失敗が多いのでしょうか?それは結局事前の投資経済評価が甘いんです。M&Aによるシナジーとかを甘く見積もっているんです。

ゴールドマンサックスなどの投資銀行はディールを成功させて成功報酬を貰ってなんぼの世界なので、基本的にポジティブな未来明るい投資計算をサポートしがちです。また、会社としても今まで散々デューデリジェンスなどで費用掛けてきたのにここでM&Aをストップするなんて嫌だ!という思いもあるでしょう。サンクコストのバイアスというやつです。

より重要なのは社長や専務などのお偉い方々もみな普通の感情ある人間だという認識です。滅多に姿を見せない社長や役員が特別な人間だと思っていませんか?

そんなことありません。皆普通の人間ですよ。人間なんて生理的な欲求レベルでは大差あるわけありませんから。

1年くらい前ですかねYouTubeで「歌舞伎町ナンバーワンホストが教える美女の落とし方」みたいな動画を観てたんですが、そこでホストがこんなこと言っていました、「みんな気張りすぎ、一見高嶺の花に見える美女や女優もそこらへんにいる普通の女の子と変わらない。なのに売れっ子キャバ嬢や女優だからって別世界の人間みたいに思ってしまうから声も掛けられないんだよ。もっと自然体で話せばいいのに。」

これを聞いて私は「なるほど、確かにそうだな!!」って妙に感動したのを覚えています。1年以上前の動画なのになぜか覚えています。

恋ダンスが可愛すぎるガッキーだって普通の女の子のはずです。小学生の頃は普通に友達と遊んでいたはずですし、普通に机で勉強していたはずですし、普通に男子どもにちょっかい出されていたはずです。

なのに、芸能人や女優という肩書を持つだけで、この人はもう普通の人ではない、とても庶民が話しかけていい相手ではないと思ってしまうわけです(まあ実際ガッキーに会うことができても、絶対に話かける勇気ありませんがw)。

話戻しますが、普段なかなかお目にかからない上場企業の社長や会長だって感情ある同じ人間なわけです。

どれだけ洗練された誰もが憧れる役員であっても、みな普通に欲求・欲望があります。絶対にあります。たくさんお金が欲しい、なるべく楽したい、名声が欲しい、女にモテたい、従業員から尊敬されたい、日経新聞の「私の履歴書」に載りたいとか。

感情があるのです。てか人間らしい感情がない人って気持ち悪いし、そんな人が企業のトップにいるのは嫌です。仕事と勉強しかしません、みたいなクソ真面目経営者ってなんか尊敬できないですよね。

名声が欲しいと思う人間の感情を理解すべきです。ダイナミックな経営をしてガンガン企業を成長させて名経営者と言われたいと思う経営者の人間としての感情を理解すべきです。

一見して合理的な意思決定に見えて、裏には経営者の野望や欲望が存在する可能性があることを忘れてはいけません。そういう人間の感情を踏まえて株式投資の意思決定をすることも株主として必要です。理論だけで世の中回ってません。

別に感情で意思決定することがある経営者を批判したいわけではありません。人間ってそういうものだと我々投資家が理解すべきだと言いたいのです。

あなたも普段買い物するとき、そんなに理論的に計算して買い物しますか?

ちょっと普段の買い物とは違いますが、例えば車を買う時。

コンパクトカーで十分なのに昔から憧れていたクラウンアスリートを買うおじさんがいたとします。その人は奥さんにこう言うかもしれません「高額な車だから周りに尊敬されて営業成績があがるんだよ」、「クラウンは頑丈だから万が一事故があっても安全なんだよ」、「クラウンは長く乗れるから生涯コストを考えれば割安なんだよ。」

これは結局感情で買ったクラウンの買い物合理性を後からごちゃごちゃ理論付けしているだけです。自分の買い物を冷静に客観的に振り返れば感情に左右されて物を買っているケースは多いものです。

重要なので繰り返しますが、会社経営では感情で意思決定してファイナンス理論で正当化することが普通にあります。これは投資家として肝に銘じておくべきです。

経営とは人間がやるんですから、人間臭さがあるんです。それが普通なんです。

  設備投資が少ない企業を狙え

記事タイトルに【投資リターンが上がる】と謳った以上、投資に関連する話をする責務が私にはありますね。

以上の事実から我々株式投資家として心掛けるべきことを言っておきます。

それは、なるべく設備投資が少ない企業に投資しろということです。

経営者がAIにならない限り、人間が経営を続ける限りこの感情が優先されるという問題は解決不可能だと思うべきです。

ということは、少ない設備投資でも多額のキャッシュを生み出し続けることができる、そんな金の生る太い木を持っている優良企業に投資すべきです。

これはシーゲル教授も言っていることです。シーゲル教授も過剰な設備投資は株主利益を棄損すると言っています。

設備投資は生産性の源泉といっていい。だが実行は節度を伴わなければならない。過剰な設備投資は、きっと収益の足をひっぱり、価値を破壊する。

『株式投資の未来』第7章資本を食う豚 より引用

私はシーゲル教授の『株式投資に未来』を読んだとき「この本は凄い!」と思ったのは、確かにデータで客観的に証明されている点もあるのですが、それ以上に自分の経験や感覚ともの凄く一致したからなのです。

過剰な投資はせずに、淡々と株主に還元し続ける企業こそ株主に最も報いる企業であるという結論は、私の社会人経験と完全に整合したのです。

だって私は会計士として、また経理部員として何度も見てきていますから、M&Aが当初思った通りにシナジーを生まずにのれんを減損しなくてはならないという議論を。そのM&Aのためのお金を払っているのは株主ですからね。株主負担ですよ。設備投資も一緒です。

皆さん、これは投資家として絶対に理解しておくべきですよ!
皆さんが投資したお金はそんな経済合理的に機械のように正しく判断されてビジネスに配分されていませんからね。常に感情にゆらゆら左右されて色んな事に使われています。

なるべく設備投資が要らないビジネスに長期投資しましょう。

典型はたばこ銘柄です。たばこ会社は設備投資なんてほぼ不要です。淡々とたばこを製造して販売すればいいだけです。だからフィリップモリスはやっぱり有望です。

20世紀後半、フィリップモリスへの投資が最も高い株主リターンをもたらしたのは偶然ではありません。フィリップモリスのように設備投資が不要なビジネスってのは必然的に株主のお金が経済合理的に使われるのです。なぜなら、感情に誘惑されて非経済的な設備投資に無駄金を使われるリスクが極めて低いからです。

私は『株式投資の未来』を読んで、フィリップモリスの高リターンを知って「なるほど!!そりゃそうだな!」と心から納得したのです。

フィリップモリスは21世紀も変わらず高リターンですよ。市場平均を超えます。私は確信しています。もちろんアルトリアも。

たばこ銘柄以外でも、コカ・コーラなどの飲料メーカーも超有望でしょうね。

要するに、いつも言っている高配当なディフェンシブ株に長期投資すべきという結論になります。

バフェットも言っていますが「設備投資が不要なビジネス」に投資するという視点はめちゃくちゃ重要です。長期投資では特に重要です。何度も言いますが、設備投資やM&Aなど大型の意思決定には経営者の感情が介入しがちなのです。

投資をする時は、PERや配当利回りとかそういう数字にばかり着目しがちです。もちろんそれらは大切な指標です。PERが40倍を超えていたらいくら優良企業でも一旦投資はストップでしょう。

でも、長期投資ならば自分の預けたお金が株主利益のために誠実に使われるのか、という定性的な視点も重要です。それにあたっては経営者を信用するという視点は止めるべきです。なぜなら経営者は長くても10年ほどで交代するものですし、どれだけ高額報酬を貰っている経営者であってもやはり人間である以上感情はあるからです。感情で意思決定する余地は必ずあるのです。

であれば、そもそも設備投資の意思決定をする機会がほとんどない、そんな企業に長期投資したほうがいいのです。

営業CFから設備投資を引いた金額がフリーCFです。フリーCFを潤沢に生んでいる企業が魅力的です。

また、私は昔こんな記事をアップして設備投資が少ない企業をピックしました。

長期で投資リターンを上げたいなら、フィリップモリスやコカ・コーラのように設備投資が少なくて済む優良企業の株を長期で保有しましょう。

 - 投資実務