※再掲です(記事変更しました)。

米連邦準備理事会(FRB)は大方の予想通り先日のFOMCで2017年3度目の利上げを実施し、政策金利(FF金利)の誘導目標を0.25%引き上げて1.25%~1.50%としました。

以下は、FRBが9月20日のFOMCで発表した今後の政策金利見通し(ドットチャート)をグラフ化したものです。この予定は12月現在も変わっていません。2018年に3回、2019年に2回、2020年に1回追加利上げを行う見通しです。3,2,1(サンニーイチ)って私は勝手に覚えました。

 

さて、長期投資では市場に居続けることが大事ですから慎重な姿勢で投資に臨みたいところです。FRBは来年2018年に今年と同じ3回の利上げを予定していますが、利上げペースが早まるリスクもあります。

FRBが利上げを早めることがあるとすれば、それはインフレ率が予想外に上昇した時です。FRBの使命の一つは物価の安定(stable prices)です。2%前後の安定した物価水準を維持することがFRBの使命である以上、インフレ率が高騰すればそれを抑えるために利上げを早める可能性があります。

FRBの使命はもう一つあって、それは最大限の雇用(maximum employment)です。こちらはすでに達成できていると言えるかもしれません。米国の失業率は4.1%と低水準で、来年は3.9%にさらに改善すると見込まれています。

失業率が下がると普通は賃金が上昇します。失業率が下がるってことは、経営者は簡単に人を雇えないということです。採用市場に存在する人が少ないわけですから、雇う側の交渉力は小さくなります。俗に言う「就活売り手市場」です。失業率が下がると採用される側の労働者が職を選びやすくなり、結果として採用する側は高い賃金を提示しないと働き手を獲得できなくなります。

賃金が上昇するということは、企業にとっては人件費が増えることを意味します。増えたコストを回収するためには、企業は商品の売価を引き上げなくてはなりません。それは消費者物価を上昇させます。そうやって、賃金上昇を起点にインフレ率が上昇するというのが一般的な考えです。

失業率低下 → 賃金上昇 → 物価上昇(インフレ)
というのが原則です。

しかし、今米国では失業率低下が賃金上昇を誘発していません。雇用の伸びの割に賃金上昇は鈍いです。よって、インフレ率も低い状況が続いています。2017年のコアインフレ率(食品とエネルギーを除いた物価指数)予想は1.5%です。

果たして、2018年も今の低インフレが続くのでしょうか?

税制改革案では法人税率が35%→21%でまとまりそうです。トランプ大統領は積極的なインフラ投資案も公約に掲げています。ここまで失業率が下がっている状態で、企業投資を促す政策を積極的に実施すれば予想外にインフレ率は上がってしまうかもしれません。

もしそうなればFRBは金融引き締めを急ぐ可能性があり、株価は調整局面を迎えるかもしれません。2018年も株価は上がるだろうというアナリスト予想が多いようですが、どうなるかはわかりません。アナリスト予想なんて大して当てになりません。

個人的に思っていることですが、2018年に株価が調整局面入りする可能性があるとしたら、(期待)インフレ率の急伸だと思っています。溜まったマグマが急に噴出してインフレ率が急上昇すれば、FRBは経済にブレーキを掛けざるを得ません。急激な利上げは、法人減税効果なんて吹っ飛ばす力を持っていると思います。

米国株には楽観的な見方が多い様に感じます。2017年はガンガン含み益が増えていった投資家が多いことと思いますが、ここで少し兜の緒を締めておくことも必要かもしれません。別に不安に思わせたいわけでは全くなく、今後もしかしたら来るかもしれない暴落に慌てないでいいよう、心の準備をしておいて欲しいだけです。

どう心の準備をすべきか?

それは(期待)インフレ率上昇による金利上昇で株価が急落しても、慌てて株を売らないという心構えです。インフレ率が上昇したら全セクターで株価は下がる可能性が高いです。インフレ率が上昇すれば、高いインフレ率でも実質リターンが得られる水準まで株価は調整するでしょう。

しかし、長期的には株価は復活します。なぜなら、インフレ率の上昇は中長期的には企業の利益を増加させ、増加した利益は配当を上昇させるからです。インフレ率が上昇した分増配率も上昇し、株価もそれに合わせて上昇することが期待されます。配当が増えれば株価も上がります。

金利上昇で株価が下がってもビビッて株を投げ売る必要はありません。株式は短期ではインフレに負けますが長期では勝ちます。常に長期的な目線を持って、どっしり構えてマーケットに居座りましょう。