私はディフェンシブ株を中心にポートフォリオを組んでいます。

「ディフェンシブ」って英語は、日本語では「防御」と言うのが適切でしょうか。

サッカーやバスケなどのスポーツでもディフェンスって言葉を使いますよね。防御というか守備ですね。ディフェンシブ株とは守備が強い銘柄です。サッカーで言えばバルセロナのピケやレアルのマルセロみたいな感じかな。プロ野球で言えば元阪神の新庄や広島の菊池、ソフトバンクの今宮みたいな感じでしょうか。

とにかくディフェンシブ株は守備が強いんです。株式投資の世界で守備が強いとはどういうことかと言えば、不況の時にも業績が悪化しにくく、常に安定した四半期利益を稼げる企業ということです。景気安定株と言い換えてもいいです。生活必需品セクターやヘルスケアセクターが典型です。不況になってボーナスが減っても、お茶やティッシュはいつも通り買い続けますよね。景気に関係なく病気になる時はなっちゃいますよね。

個人的に、もっとも守備力が高いと思うのは飲料メーカーです。

ディフェンシブ銘柄を具体的に例示すれば、
プロクター&ギャンブル(PG)
コカ・コーラ(KO)
ペプシコ(PEP)
アンハイザー・ブッシュ・インベブ(BUD)
ジョンソン&ジョンソン(JNJ)
マコーミック(MKC)
ユニリーバ(UL)
などがぱっと思いつきます。

私も含め、これらディフェンシブ株に投資している米国株投資家さんは多いと思います。

あなたは、なぜディフェンシブ株に投資をしているのですか?

それはもちろん、ディフェンシブ株への(長期)投資が儲かると思っているからですよね。

そりゃそうです、投資は金儲けの手段ですから。金が手に入らないなら投資なんてやる意味ないですよね。コーラが大好きでコカ・コーラ(KO)を応援したいからKOに投資しているのですか?もしかしたらそういう思いもあるかもしれませんが、そうであったとしても最終的な投資リターンがないと意味ないですよね。

そう、私もディフェンシブ株を長期保有すれば儲かると、S&P500を超えると信じて投資を続けています。

ですが正直言って、10年~20年レベルの投資期間でディフェンシブ株が市場平均を超えると期待するのは相当甘いと思います。そもそもディフェンシブ株は本質的に投資リターンが小さいと考えるべきです。

 

株式投資が社会に与えている価値

収益が安定しているディフェンシブ銘柄は概して市場平均よりPERが高く20倍を超える銘柄も珍しくありません。PERで考えれば、ディフェンシブ銘柄に高いリターンを望めないのは当然という意見があります。

それはその通りだと思います。が、一旦PERとか配当利回りとかそういう数字の説明は横に置きます。もう少し抽象的に考えてみましょう。

詐欺、横領、窃盗を除けばお金を稼ぐ手段はただ一つです。社会に価値貢献するということです。世の中は仕事で出来ています。一人一人が自分(家族)以外の他人の生活を支えているからこそ、こんなに豊かな日本経済が実現しています。私は上場企業の経理として、正確な決算書を作成して投資家を始めとする利害関係者の皆様に正しい情報を提供することで、社会のお役に立てているつもりです(それを実感する場面は少ないですが・・)。その仕事に対する報酬としてお給料を頂いています。

「お金を稼ぐ=社会への価値貢献」です。お金は社会からの「ありがとう」の気持ちであるという言葉を聞いたことがありますが、まさにその通りだと思います。これは綺麗ごとでもなんでもなくお金の本質を示しています。

株式投資でお金を稼ぐことができます。しかも投資元本と投資期間によっては億単位の収入になる可能性すらあります。若い頃から投資を始めれば、サラリーマンの生涯収入以上の投資収益を得られるチャンスすらあります。

なんで、株式投資でそんな大金を稼ぐことができるのでしょうか?
繰り返しですが、お金を(長期的に)稼ぐにはどこかしらで社会に価値貢献しているはずです。

株式投資をすることで、どこでどう社会に貢献しているのでしょうか?

それは、「企業のビジネスリスクを負担する」という価値貢献です。

人がやりたがらないことをするのも仕事の一つです。米国ではエレベーター修理人は年収が高いそうです(約8万ドル)。熟練が必要なのも高給の理由の一つですが、厳しい肉体労働でなり手が少ないというのも高給の理由です。狭く汚い場所を腹ばいになって進まなくてはなりません。

株式相場は毎日変動します。2018年はボラティリティも復活して投資家の不安が高まっています。誰だって自分の大事な財産を株式マーケットに置きたくなんてないですよ。毎日自分の財産が変動するのは普通は嫌なもんです。価値が変動しても最終的に価値が上がるならまだいいですが、株式は最悪紙切れになるリスクがあります。紙切れにならなくても、リーマンショックのような金融危機で価値が半減することもあり得ます。

マーケットがグワングワン変動する理由は、企業のビジネスの将来が常に不確実だからです。その不確実性を受け入れることが(長期)投資です。そこに株式投資家の価値があります。人がやりたがらないことをやるという価値です。

株式投資の利益(配当)の源は企業の利益です。それは間違いないことです。企業が利益を出してくれるから配当が増えて、投資家は報われます。ですが、企業の利益は投資家の価値貢献ポイントではありません。企業が利益を出せるのは、経営者や従業員が日夜頑張って働いてくれているからです。企業の利益に株主、特に末端の個人株主が貢献できることは何もありません。

株主は経営者と従業員を信じて株を持ち続けるのみです。経営者が判断ミスを犯して株式の価値が半減するかもしれないけど、それを承知の上でリスクを取り続けることが株主としての価値貢献ポイントです。

株主がリスクを取ってくれるから従業員は安心して働けます。企業の業績が悪化しても従業員は給料をもらい続けることができます。株主がリスクを取っているから、経営者は果敢なM&Aなど思い切った経営判断ができます。もし経営に失敗したら自分の全財産が吹っ飛ぶ状況ならば、並みの経営者はリスキーな成長投資はできないでしょう。他人の(株主の)お金なら安易に使って良いというわけでは決してありませんが、他人の(株主の)お金だからこそリスクを取った経営がし易いという面は絶対にあるはずです。

 

ディフェンシブ株の事業リスクは低い=ディフェンシブ株のリターンは低い

株式投資で儲けることができるのは、企業のビジネスリスクをテイクし続けるからです。株式収入とはリスクに対する報酬です。体を動かして汗水たらすわけではありません。むしろどんな時も動じることなく動かないことが価値に繋がります。

ここで考えるべきことがあります。

それは、ビジネスリスクの大きさは企業によって違うということです。

たとえば、創業2年目のバイオベンチャー企業のビジネスリスクはメチャクチャ高いでしょう。まだワンマン経営者が勢いで会社を引っ張ている段階で会社組織なんてない状況です。事業も特定の製品1つに依存しているかもしれません。事業リスクは大きいです。リスクが大きいからこそ、そのリスクを負担した者に対する報酬は大きくなります。ベンチャーキャピタルはそうやって高いリスクを取ることで莫大な収益を上げています。

ハイリスク・ハイリターンです。マーケットが合理的ならば、リスクが高い企業の株価は相対的に割安になって高いリターンが見込めるはずです。無論、事業が頓挫して株式が無価値になる恐れもあります。

自分のリスク許容度を把握したうえで、どこまでリスクを取るのか考えなくてはなりません。投資はリスク管理が重要です。

では、ディフェンシブ銘柄のリスクはどの程度でしょうか?
コカ・コーラやジョンソン&ジョンソンのビジネスリスクって高いですか、低いですか?

明らかに低いですよね。

低いんです。
リスクが低いんですよ、景気安定系の企業は。

コカ・コーラやジョンソン&ジョンソンのPLやキャッシュフローを見れば一目瞭然ですが、まさにワイド・モート企業です。経済的な濠の広さが嫌でも見えます。濠が広すぎてお城が見えないくらいです。この壕を飛び越えて本丸を攻撃することは不可能に思えます。

そんなワイドモート企業でも、やはり将来は不確実で何が起こるかは分かりません。いくら製品ブランド力があっても、企業内部のコンプライアンス問題から崩れ出すこともあるかもしれません。コンプライアンス違反に対して社会は厳しいです。一事が万事です。

ですが、やはり相対的にディフェンシブ企業の事業リスクが低いという点に異論はないと思います。

ディフェンシブ銘柄に投資することによって社会に果たせる価値は相対的に小さいです。だってリスクはあまりないんですもん。「別にあなたがリスクを取らないなら、私がリスクを取ってもいいですよ」って手を挙げる人が大勢いるわけです。

ディフェンシブ株投資家はエレベーター修理人ではありません。そんな厳しい肉体労働ではありません。丸の内の高層オフィスの空調の効いた環境で事務仕事をしているようなもんです。毎日定時で帰れるし、仕事もしんどくありません。その代わり給料は低めです。

そんな感じです。ディフェンシブ株のリスクは小さいです。小さなリスクしか負担していないなら、リターンが小さくても文句は言えません。

本質的にディフェンシブ銘柄の期待リターンは低いはずです。

いくら優良企業だからってコカ・コーラやプロクター&ギャンブルへ投資して、たくさん儲かるはずがありません。債券の代替的存在と言われるくらいです。国債+αくらいのリターンで然るべきではないでしょうか?

 

それでも僕がディフェンシブ株が儲かると思う理由。それは時間。

ここまで理解した上で、それでも僕はディフェンシブ銘柄に長期投資しています。ディフェンシブ株のリターンは本質的に低いはずと承知の上で、景気安定株中心のポートフォリオを作っています。

なぜか?

ディフェンシブ株への長期投資が儲かると思っているからです。

・・・

・・・

「え、こいつ矛盾してね??」って思われても仕方ありません。ディフェンシブ株の期待リターンは本質的に低いと言っておきながら、ディフェンシブ株への長期投資が儲かると言っているわけですから矛盾してますよね。

でも、僕はディフェンシブ株への長期投資は儲かると信じているんです。

なぜか?

答えはこうです。

人生は短すぎる。人間の性格は短期の結果を熱望し、すぐに金儲けはしるおかしな風潮があり、遠い将来の利益に対する割引率は高利。

ジョン・メイナード・ケインズ

 

ゆっくり金持ちになりたい人なんていないよ。

ウォーレン・バフェット

これらの言葉です。

僕はここに長期投資妙味、特にディフェンシブ株への長期投資妙味を感じています。

てか、ディフェンシブ株が市場平均をアウトパフォームするとしたらその根拠はここしかないと思っています。

ディフェンシブ株は高配当だから配当を地道に再投資することで長期で儲かるって言わることもありますが、それは表面的には歴史上の事実であっても、そこはディフェンシブ株が長期で儲かることの本質じゃないと思っています。配当利回りが高いか低いか、無配かどうかってあまり本質じゃないですね。

遠い未来の利益を人は軽視しがちです。いや軽視というか、そこまで待てないということです。そりゃそうです、誰だってすぐにお金持ちになりたいと思います。人生100年時代と言われよと、いつ急にプツっと人生終わるかわかりません。

遠い将来30年後50年後も社会で存在感を放って世界の人々に必要とされる製品を提供している企業は、その遠い未来の利益が過小評価されて今の株価になっている可能性が高いです。遠い将来を待てない、という人間心理・感情は時代地域普遍的だと思います。

ディフェンシブ株は長期では市場平均を超えると信じています。しかし、それはホントに長期での話です。ディフェンシブ株の投資リターンの源泉は事業リスク負担よりも時間リスク負担によるところの方が大きいです。まさに時間が富を生みます。

 

あなたなりのポートフォリオを作ればOK

あなたがディフェンシブ株に投資しているなら、本当にその投資方針でいいのかよーく考えた方がいいと思います。投資期間を10年~20年程度で考えているなら、ディフェンシブ株がS&P500をアウトパフォームするのはかなり困難だと思います。

投資の目的は人それぞれです。絶対の正解はありません。あなた自身の投資の目的、リスク許容度をなるべく客観的に把握した上で納得してポートフォリオを組むといいと思います。

あとは好き嫌い、価値観ですね。ここ大事だと思います。個人的なことを言えば、私は配当が好きです。そこもディフェンシブ株に投資している理由の一つです。ディフェンシブ株は配当利回りが高い傾向にありますから、高配当な銘柄を探すとディフェンシブ株に行き着くことが多いです。

お金を稼ぐには社会への価値貢献が必要です。自分が社会にどんな価値を提供しているからお金を稼げているのか、冷静に客観視することって大切だと思います。投資に限らずです。