トランプ大統領当選という第2のブレグジットが本当に起こりましたね。まさかとは思いましたが。

米国と英国という世界経済を代表する二つの先進国でポピュリズムを象徴する政治イベントが起こりました。2016年は記憶に残る年、世界の潮流が変わった年だと言われることになるのかもしれません。

イギリスはロンドンだけではない、アメリカはニューヨーク、ワシントン、カリフォルニアだけではないということです。

英米の高学歴エリート層はノーブレス・オブリージュを果たせなかったということ。田舎の低中所得層は少しでも自分たちの日常生活が改善するよう願ってトランプに投票したのです。

    金利上昇→生活必需品暴落

さて、トランプ大統領の劇的勝利を受けて金融マーケットは荒れました。株式相場もNYダウは上昇しましたが、セクター別に見ると全く違う景色が見えました。ヘルスケアと金融の2セクターは非常に強いです。

株式よりも意外な動きを見せたのが債券相場です。米国債利回りは急上昇しており、米10年国債利回りは2.1%を超えており1.7%あたりから急上昇しました。

トランプが大統領になったら債券が売られて債券利回りが上昇することは想定内でしたが、私は正直言って最初は債券利回りは逆に低下すると思っていました。

サプライズトランプでリスク回避志向が強まって株式が売られて債券が買われる、相場が落ち着いたところでトランプの積極的財政インフラ投資を材料に債券が売られて結局債券利回りは急反発する、みたいなストーリーを描いていました(別に短期ポジションを持っていたわけではないですが)。

ですが、実際は大違いでした。取引開始直後から債券は怒涛の売り売り売りの嵐。

ブルームバーグによると、大統領選後の1日で世界の債券投資家は3370億ドル(約35兆7000億円)を失ったとのこと。

この急激な金利上昇を受けて、多くのシーゲル流投資家は短期的なダメージを受けているはずです。株式相場全体はお祭り騒ぎだというのに。

フィリップモリス(PM)やコカ・コーラ(KO)、プロクター&ギャンブル(PG)、ペプシコ(PEP)など生活必需品銘柄はこの金利上昇を嫌気して暴落しています。これを暴落と呼んでいいのかわかりませんが、リーマンショックを経験していない投資経験の浅い私にとっては暴落に感じました。

ティッカー 8日終値 11日終値 下落率
PM 97.86 88.95 ▲9.1%
KO 42.88 41.03 ▲4.3%
PG 87.46 83.58 ▲4.4%
PEP 108.72 103.19 ▲5.3%

フィリップモリスの下落は特に目立ちます。

このような生活必需品セクターの優良銘柄は債券の代替として買われるディフェンシブ性の高い銘柄なので、もろに債券と競合します。なので債券が売られて債券利回りが上昇した結果、これらの高配当ディフェンシブ株が下がっています。

平たく言うと、債券利回りが上昇して無リスクで得られるリターンが上昇しているんだから、わざわざ高い金払ってまでフィリップモリス株を買わないよってこと。

賢明な長期米国株投資家は上記のようなディフェンシブ高配当株を相対的に多く保有している方も多いでしょう。

そういう方は、短期的には辛い思いをしているかもしれません。NYダウが最高値を更新、ファイザーやウェルズファーゴが暴騰するなか、自分の保有銘柄だけ暴落しているんですからね。

私が多額を保有している生活必需品セクターETFの”VDC”や高配当ETFの”HDV”も結構下げました。

  配当利回り上昇でチャンス!

確かに短期的であっても、自分の保有している株式の価値が下がって含み損が膨らむことが辛いのは理解できます。ネット証券のサイトを開きたくなくなるその気持ち痛いほどわかります。

でもね、はっきり言って全く心配する必要はありません。

あなたが持っている株がボロ株だったら保証はできませんが、上記4銘柄のような世界トップクラスのブランド力を持つトラックレコードのある強い企業であれば、今回のような下落相場は全く問題はなく、むしろ喜ぶべきとすらいえます。

シーゲル教授は言っています、「配当は下落相場のプロテクター」だと。

きちんと収益を上げて高い配当を支払う能力がある企業の株価が下がっても別に減配するわけではないんだから、その分配当利回りが上がるんです。そういう時期にしっかり配当再投資、給料追加投資をすることで長期投資パフォーマンスは押し上げられます。

割高だ割高だと言われ続けてきた生活必需品等の高配当銘柄も、今回の下落で大分配当利回りが高まっています。

世間は上昇相場に沸いているなか短期的な上昇が見込まれる株に投資したくなる気持ちはわかりますが、ここは強く抑えるべきです。金利が上昇してきているし、ドッド・フランク法など金融関連法案の規制緩和期待もあって銀行株はさらに上がる可能性があります。素材、工業株もグングン株価を伸ばす可能性があります。

でもね、ここはグッと我慢すべきところです。

売るべきではない、我慢強く保有してきた高配当ディフェンシブ株を売ってはいけません。せっかく配当利回りが高まってきてここから配当再投資の勢いが増すというタイミングで、モメンタム系の資金の波に乗ってはいけません。

シーゲル教授が『株式投資の未来』で言っていたことをもう一度思い出しましょう。

長期株式投資のリターンの主な源泉は何ですか?

配当ですよ。

配当を地道に再投資することで持ち株数が増加して資産が増えていくのです。

金利が上昇して高配当株が下落していく中でも、粘り強く買い下がるべきです。どこが底かなんてわからないので別に一気に買う必要はないでしょうが、今までと変わらず地道にコツコツ買い増せばいいんです。

私はインデックス投資一本だった頃、よく書籍やインデックス投資ブロガーさんが言っている言葉の意味を本心では共感できていませんでした。その言葉とは、「インデックス投資は株価が上昇しても嬉しいけど、下落しても嬉しい」です。

株価が上がれば資産が増えるし、下落すればドルコスト平均法での購入単価が下がるという理由です。

まあ言いたいことはわかるけど、やっぱり上昇したほうが嬉しいじゃんって思っていました。

でもね、今は全く違います。

コカ・コーラやフィリップモリス等の高収益ハイブランド企業である限り、株価の下落なんて全く気にする必要はないと思っています。これは強がりではなく、本心からそう思っています。

繰り返しですが、これらの企業は常に多額の配当を支払うことができる高収益企業なので、株価が下がっても別に業績に不安があるわけではなくしたがって減配の恐れはないため、株価下落分がそのまま配当利回りの上昇に繋がるのです。

自然利子率が下がっていると言われる昨今の経済環境の中、このまま一本調子で金利が上昇していく可能性は低いかもしれません。トランプ大統領の財政投資政策もどこまで本気なのかわからず不透明です。そもそも財源はどうするのか!?

でも明らかに潮目は変わっています。債券利回りは底を打っているでしょう。

ここから先、生活必需品セクターなどのディフェンシブ株のパフォーマンスは厳しくなる可能性が高いです。でも、それはある意味仕込み時とも言えます。

シーゲル教授が説いた株式投資法の原理原則を思い出すべきです。