株式投資の利益は最終的にはすべて配当に集約されます。キャピタルゲインとは所詮株主間の富の移転に過ぎないゼロサムゲームのギャンブルの要素が大きいと思います。

キャピタルゲインはギャンブルだとか言うと、こんな声が聞こえてきそうです。

そうは言うけど、過去アメリカ株価は右肩上がりじゃないか。
S&P500やNYダウに長期投資していれば自然とキャピタルゲインも増えていくけど、それもギャンブルだと言うのか?

確かに、アメリカの株価は過去右肩上がりでした。アメリカ株に長期投資してきた人は、期中の配当だけでなく大きなキャピタルゲインの恩恵を受けてきたはずです。

以下は1980年からのNYダウのチャートです。

(出典:世界経済のネタ帳

1980年からNYダウ連動ETFに投資していた人がいれば、現時点で相当な含み益があるはずです。1980年末のNYダウは963ドルで2016年末は19,762ドルです。
20倍です。

1980年に100万円をNYダウに投資していれば、2016年末には2,000万円以上になっています。

こういった長期投資の結果もたらされるキャピタルゲインも、ギャンブルとして他者から奪った富なのでしょうか?

私は、そうは思いません。ギャンブルではないです。ただし、若干のギャンブル要素は残ると思います。

 

株式投資の利益はすべて配当に集約されると冒頭で言いましたが、それには一つ前提条件があります。それは、企業が清算するまで株を持ち続けるということです。

あなたがある企業の株を買ってその企業がいつか清算して消滅するまで株を持ち続けるなら、あなたの投資利益は正真正銘配当だけと言えます。会社清算時の残余財産分配金も含めての配当がすべての投資利益となります。

ただし言うまでもなく、この前提条件は非現実的です。企業は永続して事業を行うことが前提です。ましてや、長期投資家が好むコカ・コーラやジョンソン&ジョンソンなどの巨大企業が倒産や清算することは、ほぼ考えられません。

私たちの寿命より会社の寿命の方が長い以上、私たち長期投資家もいつかは株を売却することになるでしょう。例え子供に株を相続するとしても、いつかは必ず株を売却するでしょう。

であれば、配当こそがすべての利益とは実質的には言えなくなります。
キャピタルゲインを無視することはできませんね。

 

ところで、株価ってなんで上昇していくんでしょうか?
上で記した通り、NYダウは途中で上下しながらも右肩上がりを継続しています。

株価が右肩上がりである理由として、資本主義経済では常に成長を求められ企業の利益は長期的に増加していくからだと言われます。

その説明は正しいと思っています。

ただ、株価はマーケットで合理的に値付けされているなら、将来の経済成長も含めてすべての利益(配当)を織り込んでいるはずという見方もできます。将来のすべての利益(配当)が織り込まれているなら、理論的には株価は右肩上がりになることはないのでは、と言えるかもしれません。

でも、事実として株価は歴史上右肩上がりを続けています。
そして、それは今後50年も変わらないと思います。

なぜ株価は右肩上がりを続けるのか?

そもそも株価ってなんでしょうか。

株価とは将来のすべての配当がギューっと凝縮されたものというイメージです。

企業は半永久的に存続することが前提とされます。その企業が来年、10年後、30年後、100年後、500年後までず~と存続して配当を出し続けることを見越して株価はマーケットで値付けされています。

ポイントは、将来の配当は現在の配当水準をもとに推定計算されるということだと思います。

 

ちょっとだけ、ファイナンス論で説明させて下さい。
配当割引モデルによると、理論株価はこう算出されます。

分母は無視して、分子に注目して下さい。

分母が一定だとすれば、分子の翌年配当(要するに現在の配当水準)が上昇すればするほど理論株価は上昇することになります。

このモデルは配当が一定の成長率で永久的に成長し続けることを前提とします。一定の成長が続くのかという前提の妥当性はどうでもいいです。「永久」というのがポイントです。

マーケットは将来の配当を常にすべて合理的に織り込んでいます。しかし、企業の存続期間が永久であるために、結局現在の配当水準が上がれば”永久配当総額”も上昇します。

マーケットが将来配当をすべて織り込んでいるのは事実だけど、現在の配当水準の上昇に伴って、未来の配当総額の見込み額も徐々に上昇していくということです。これはマーケットが非合理という意味ではありません。

企業が利益成長(配当成長)を続けるならば、株価は右肩上がりになります。株価はこれからも右肩上がりを続けると思います。

 

ここまで話したうえで、再度あなたに問いかけたいです。

長期投資家にとってのキャピタルゲインとは何でしょうか?

NYダウ連動ETFに投資しているあなたは、今から30年間それをホールドし続ければ、それまでの分配金だけでなく大きなキャピタルも得ているはずです。

そのキャピタルゲインの本質とは何でしょうか?

ギャンブルによって他者からゼロサムゲームで奪ったお金でしょうか?
いや、違います。

そのキャピタルゲインの本質とは、やっぱり配当です。

30年後あなたが株を売却したとしても、企業は存続し続けて配当を出し続けるでしょう。株を売却したあなたは、株を手放した以上将来の配当を得ることはもうできません。

いくら長期投資と言えども、株主の投資期間より企業の存続期間の方が長い以上、途中で株を売却してそれ以降の配当を諦めることは仕方ないことです。

でも株を途中で売却したとしても、将来の配当は実質的にはしっかり受け取ることができるのです。

なぜなら、将来の配当がギューっと凝縮されたのが株価(売却価額)だからです。30年後の株式時価とは、その時点で株を売却したとしたら今後貰えなくなるであろう将来配当の総額を意味しています。

長期的に株を保有し続けて得られるキャピタルゲイン(売却益)は、それまで企業が利益成長して増配を続けてきたからこそ得られるものです。なぜなら、売却価額たる株価とは増配を続けてきた現時点の株価水準から推定計算される将来の配当総額だからです。

長期投資家にとって(“長期”の厳密な定義はないが)キャピタルゲインとは、配当そのものです。そう考えれば、やっぱり長期株式投資の利益はすべて配当だと言えます。

長期投資家にとって、株を売却することは未実現将来配当を実現させることだと言えます。

ただし、長期投資家にとってのキャピタルゲインにもギャンブル要素は付きまといます。それは、将来の配当総額を織り込んで値付けされている株価は常に変動しているからです。

株価がいつも変動しているなんて、当たり前ですよね。

いつか株を売却する時がきたら、それまでの配当は確定利益です。ですがキャピタルゲイン(売却益)は不確実です。急に株式市場が暴落して売却益が目減りするかもしれません。

そこはギャンブル要素があります。
つまり、株を売却したいあなたと未来の株主との間の将来配当の奪い合いです。
ここはゼロサムゲームです。

長期投資家にとってのキャピタルゲインは、プラスサムとゼロサムの要素が混在しています。
今までの配当成長に伴う株価上昇分はプラスサム。
売却時の短期的な株価変動によるキャピタルゲインの増減はゼロサム。

企業の存続期間が永久である以上、たとえインカムゲインを重視する長期投資家であれ最後にはどうしても、キャピタルゲインに伴うギャンブル要素が入り込みます。
それは仕方ないことです。

ですが、このギャンブル要素を少なくする方法があります。
それは利益成長が緩やかな成熟優良企業に投資して、なるべく多くの利益をインカムゲインとして確定していくことです。

そして、なるべく長期間投資を続けることです。
投資期間が長くなればなるほどキャピタルゲイン自体は増えますが、そのキャピタルゲインがギャンブルに左右される要素は小さくなります。