Grow Rich Slowly シーゲル流米国株投資で億万長者になる!

米国株投資を通じて資本主義社会を豊かに楽しく生きる

*

【鋭い質問】債務超過なのになんで配当出していいの?

   

投資に関するご質問は、いつもどう回答すべきか色々悩みます。

こうやって投資ブログを書いている立場ではありますが、私は米国株投資については初心者の域をまだ出ていないと自覚してます。
ブログ記事も、色々とググったり本読んだりして四苦八苦しながら書いている状態です。

ですが、会計や会社法に関するご質問であれば、比較的すんなり回答できることが多いです。
そりゃ20歳の頃から会計の勉強初めて、もう今年で会計キャリア11年目を迎えますから。
頭で理解しているというより、もう体に染み込んでいる感じです、会計は。

 

 

さて、先日、読者の方からこんなご質問を頂きました。

最近、簿記の勉強をしてるのですが、自己株式が4兆円くらいあるフィリップモリスって、分配可能額はどうやって計算してるのでしょうか…?

「簿記」という単語があるし、会計についてのご質問ならすぐにお答えできるだろうと高を括っておりました。

しかし。
これ、難しかったわ。
てか、今でも答え出てません。
なのに、記事にしてしまいました、ご容赦ください。

新宿のスタバで余裕ぶっこいてコーヒー飲みながら読んでいましたが、頭抱え込んで悩んでしまった。

フィリップモリスって高配当で有名な銘柄ですが、債務超過なんです。
日本では債務超過の会社は原則として、配当や自社株買いをすることが禁止されています

それは、会社法の分配可能額という規制によるものです。

では、なんでフィリップモリスは普通に配当を出しているのでしょうか?
なんでだろう?

「言われて見れば確かにそうだよな~」って思いました。
今まで疑問にすら思いませんでした。

せっかくの機会ですので、分配可能額というものについてちょっと紙面を割かせて下さい。

分配可能額の計算式とは・・・、みたいな小難しい議論をするつもりはありません。
ちょっと言及しますけど。
(詳しい計算方法とかは、ググればいくらでも出てくるので興味ある人はググってみて下さいね。)

では、もしよかったら、このまま読み進めて下さい。

 

 

 

 

そもそも、分配可能額ってなんなの?
って思われることでしょう。

分配可能額とは配当として株主に払ってよい上限金額のことです。

連続増配記録やら配当利回りやら、株式投資家として配当には注目することが多いと思います。
「もっと増配しろー!」って思うこともあることでしょう。

“基本的には”、企業の経営者は自由に配当額を決定することができます。
配当金額は正確には株主総会での決議事項ですが、実務上は取締役会で決定されます。

ただ、いくらでも自由に配当を払っていいわけではありません。

会社法という法律によって、配当として払える金額には制限が課されます。

なぜ、会社法によって配当金額に制限が課されるのか?

先ず、是非あなたに知っておいて欲しいことがあります。
それは、会社法は株主の味方ではなく債権者の味方だということです。

めちゃくちゃ大雑把な表現だとわかっていますが、語弊を恐れずに言うと会社法は株主に厳しく、債権者に優しい法律です。

債権者を守るための法律が会社法だと思って、大外れはしないです。

債権者って、企業にお金を貸している人ですね。
銀行とか、売掛金を持っているサプライヤーとかですね。

そういった企業にお金を貸与している債権者を保護することが会社法の存在意義です。

なんで債権者を守る必要があるのか、って疑問に思いませんか?

一定のルールに基づいて自由市場で商売やっているわけです。
取引相手の信用を調査することもビジネスの一環ですよね。

ほら、売掛債権が回収できなくて倒産する企業もたまにあるじゃないですか。
例えば、先日の「てるみくらぶ事件」とか。
てるみくらぶが倒産して、その連鎖倒産として破たんした企業もありました。てるみくらぶに対する多額の債権が回収不能になり経営破綻。

可哀想ですよ、確かに、連鎖破産なんて。
でも、そういう債権管理も経営の一環ですよね。
取引先1社が倒産したくらいで、自社も倒産するような売上ポートフォリオが悪いのです。
厳しいですが、連鎖破産であってもそれは経営者の責任です。

こんな感じで、基本的に資本主義社会ではビジネスは自由市場での競争が原則です。

じゃあなんで、敢えて法律まで作って株式会社の債権者の利益を守ってあげる必要があるのでしょうか?
分配可能額という会社法の規制は、債権者を守るために存在する規定です。

それは、株式会社という仕組みは株主有限責任だからです。
会社のお金が一度株主のお財布に入ってしまったら、債権者はそのお金を取り立てることができないからです。
だから、ある程度のキャッシュはきちんと会社内部に貯め込んでおきなさい、というわけです。

「あ、ごめんごめん、先月の売掛金返済できないわ(><)。今月株主への配当があってさ~、会社のお金全部株主に返しちゃったんだよね~。だから返済できるお金ないわ、マジごめん。来月まで待ってくれない?」

こんなことされたら、債権者はめちゃくちゃ困るんです。
だって、株主に対して直接お金を請求することはできないからです。

こういうアホなことする経営者から債権者を守るために、会社法は分配可能額規制を設けています。
ちゃんと債権者に返済できるだけの資金は残しておきなさいね!ってことです。

あなたも株主だと思いますが、今まで債権者からお金を請求されたことはないですよね。
万が一、あなたが投資する企業が破たんしてもあなたの株式価値がパーになるだけで、それ以上の損失は発生しません。

これが株主有限責任制度です。
この有限責任制度があるからこそ、株主は勇気出してリスクを取ることができて株式会社制度はここまで発展したんです。

不思議ですよね~、ビジネスなんて最初は単なる物々交換ですよ。
それが貨幣の誕生により富の蓄積が可能となり、株式会社制度の誕生で富の集約が始まり、そして現代エクソンモービルやゼネラルエレクトリック、グーグルなど大資本が形成されているわけです。

 

 

 

さて、ちょっとだけ細かい話に進みます。

分配可能額ってどうやって計算するのか、ざっくり言います。
前述しましたが、細かい計算方法はググればいくらでも出てくるので、興味ある人は検索してみて下さい。

めちゃくちゃざっくり言うと、分配可能額とは

「利益剰余金(※1)」ー「自社株(※2)」
※1:過去の利益の蓄積から、過去の配当を差し引いた金額
※2:過去の自社株買いの累積金額

今までビジネスを通して獲得した利益から、今までの株主還元額(配当+自社株買い)を差し引いた金額が分配可能額ということです。
平たく言うと、タコ配当はダメだよってことです。

利益剰余金という過去の蓄積利益から配当金を差し引いた金額だけでは、分配可能額とはなりません。
そこから、自社株の金額を差し引く必要があります。

なぜ自社株をマイナスするのか?
それは、自社株買いとは株主還元だからです。
ここは、米国株投資家のあなたには理解して欲しいポイントです。

自社株買いって株主還元です。
配当と自社株買いってその効果は違いますけど、どちらも株主還元であることに変わりはありません。

だから、すでに株主に返還している金額である自社株式相当分は分配可能額から控除しなくちゃいけないんです。

例えば、こんな創業50年の株式会社があるとします。
過去50年の累積利益:1000億円
過去50年の累積配当:500億円
過去50年の累積自社株買い:200億円

この場合、分配可能額は(1000億円-500億円)-200億円=300億円となります。

もちろん、細かい計算規定は色々とあります。
(例えば、配当金のうち10%は債権者のために積み立てるとか)
上記計算はかなりざっくりですが、イメージだけ掴んで欲しいです。

過去の利益の蓄積のうちまだ株主に還元していない金額についてのみ、配当を払ってよいということです。

 

 

 

さて、この日本の会社法のルールをフィリップモリスに適用するとどうなるでしょうか?

2016年12月末を基準にすると、
利益剰余金=$30,397M
自己株式=$35,940M

利益剰余金より自己株式が多く、純資産はマイナスで債務超過です。

これは、フィリップモリスの過去の利益の蓄積から配当と自社株買いの金額を控除すると、マイナス残になるということを意味しています。
フィリップモリスは稼いだ利益以上のお金を株主に返還しています。

つまり、フィリップモリスは蛸配当をしているということです。
自らの足を食っています。

こんなことしていいのでしょうか?

フィリップモリスには多額の借入があります。
フィリップモリスは銀行という大きな債権者を抱えています。

米国の会社法は、このフィリップモリスの債権者の利益を保護する必要はないのでしょうか?

だって、銀行は不安ですよね?
こんなにたくさんの配当やら自社株買いでガンガンキャッシュを流出されられたらさ。
「俺らの貸付金はちゃんと返済されるのか!?」って銀行側は不安になりますよ。

もし仮にフィリップモリスがデフォルトを起こしても、債権者である銀行は株主にまで請求できませんから。

なんでフィリップモリスは分配可能額がマイナスなのに、当たり前のように多額の配当を払っているのでしょうか?

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

と、こんな感じでスタバで険しい顔して一人悩んでいたわけです。

 

すみませんが、答えはまだ調べきれていません。

推測なんですが、米国の会社法(州法なので州毎に内容は違うだろうけど)は、日本の会社法ほど分配可能額規制が厳しくないのでしょう。
さすがに何らかの配当規制はあるはずですが、日本とは異なる基準なんだと思います。

アメリカは自由の国です。
アメリカは自己責任の国です。

配当での資金流出まで含めて、債権者側できちんとリスク管理しなさいということかもしれません。

てか、そもそもビジネスって信頼が最も大切です。
人間関係でもビジネスでも、信頼を築くのは難しいですが崩れるのは一瞬です。

企業側も債権者の信頼を失ってまで、配当を出しまくるインセンティブはありません。
配当払い過ぎてキャッシュが足りなくて借金返済できませんでした、、みたいなそんなアホな資金管理をするCFOはいませんから。

 

 

とても、鋭いご質問でした。
米国企業の配当規制を考える良いきっかけとなりました。

 - 投資理論・哲学