イギリスがEUからの離脱を決定しました。

正確には国民投票には法的拘束力はないので正式にEUから離脱したわけではありません。
日経新聞やウォールストリートジャーナルによると、これから約2年間EUとの交渉等を経てEU離脱の道筋を進んでいくようです。

ロンドンとスコットランドでは残留が上回りましたが、ウェールズと北アイルランドでは離脱派が上回り、結果として僅差で離脱派が勝利となりました。(残留48.1 離脱51.9)
キャメロン首相は辞任を表明し、後継として前ロンドン市長で保守党のボリス・ジョンソン氏が次期首相との声があがっています。

イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国から構成されています。

UK(Wikipediaより)

これが一般的な理解ですが、実は隠れた国がもう一つあります。
それがロンドン。

ロンドンは国ではないですが、実質的に一つの独立国家と言っても過言ではない位です。
ロンドンはイングランドの首都で、世界の金融街で文化の発展度も高い街です。
家賃もすごく高い。

このロンドンに住み働いている人々は所謂インテリ層で高い教育を受けた人々で所得も高く、豊かな生活をしています。
このロンドンが別格で、イギリス国内の他の田舎や地方では多くの人が所得の低い工場労働や農業に従事しています。

今回の国民投票はEU残留によって経済メリットが得られるインテリ層と、移民で職を奪われていて(と主張しており)、EU加盟による便益が加盟のための諸コストをペイしていないと主張する労働者層の争いでした。

投票当日ロンドンは大雨で、これによって残留派が多いロンドンでの投票率が落ちたことが離脱派勝利の一因だったと言われています。
まさか天気のせいでEU離脱になっていたとしたらそれは残念なこと。

ただ、いずれにしても、今回の国民投票で注目すべきはイギリス内の国民が完全に真っ二つに割れてしまっているということ。
ここまで50:50に世論が分かれることって珍しいと思います。

資本主義が進むと、どこかのタイミングで労働者の不満が蓄積し暴動が起こるはずだと、マルクスは『資本論』で主張しました。
今回の離脱はある意味で労働者の暴動と解釈することもできるかもしれません。

グローバル資本主義の拡大を止めることはもはや不可能ですが、資本主義が進むとどうしても格差が生まれます。グローバル資本主義に対応できる教育水準の高い人々とその他多数の庶民との格差は拡大しています。

格差が生まれてしまうことは資本主義の副産物としてやむを得ないですが、如何にして低所得な人々の不満を抑えて社会を安定化させていくのかということが今後の資本主義社会発展の鍵ではないでしょうか。

  EU離脱で100万円の損失!

開票直後は残留有利の報道があり、ドル円は一時106円台まで円安に進みましたしダウは上昇しました。
ところが、日本時間の朝方あたりから段々雲行きが怪しくなり、お昼時にはEU離脱ほぼ確定という報道がなされました。

ドル円は一時99円台と100円を割り込みました。
ポンド円は一時130円までポンド安が進みましたが、現在は140円程まで戻しています。

世界の株式相場は当然リスクオフの反応を見せました。
開票前はローレンス議員の殺害事件という非常に痛ましく悲しい事件の影響もあり、残留派勝利だろうと予想している人が多かったです。
私も残留だろうと推測していました。
株式市場もある程度残留になることを織り込んで推移していたので、反動の下落は凄まじいものでした。

日経平均は1,286円安(△7.9%)、NYダウは△3.4%、英国FTSE100種は△3.2%、ドイツDAXは△6.8%、イタリアは何と△12.5%と先進国株価は総崩れでした。

このような円高株安でバイ&ホールドのすべての個人投資家は損失を受けているはず。
もちろん私も例外ではありません。

ブレグジットが起こった1日の株価為替変動で、私の資産は概算で100万円ほど減少しました。
私は総資産の8割以上を株式に投資しており(債券はゼロ)、特にアメリカ株式の割合が高いので為替の影響も諸に受けます。
ただ、幸いしたのは、さすが強いアメリカ株式市場は下落幅が緩慢でした。
(それでもダウ600ドル下落というのは滅多にない下落でしたが。)

楽天証券とカブドットコム証券でETFを保有しています。若干投資信託もあります。

楽天証券

私の楽天証券のホーム画面です。
米国ETFの含み損は60万円にもなっています。
国内ETFはアベノミクスが始まる頃から保有している商品なので、さすがに含み益は確保していますが、かつて100万円以上あった含み益が今は50万円を切っています。

 

カブドットコム証券

カブドットコム証券で保有しているのは2つのETF。
MSCIコクサイ指数に連動する1550とS&P500連動の1557。
どちらもフリーETFで購入できます。
見ての通り、1550は僅かに含み益を維持していますが、1557は含み損に陥ってしまいました。

  何もせずに静観しておこう

英国EU離脱で100万円の損失。
確かに含み損に過ぎませんが、やはり精神的にきついものです。

100万円といったら先日もらった夏のボーナスを余裕で吹き飛ばす金額。
給料で100万円稼ぐことがどれだけ大変なことか。

正直きついです。
しんどいです。
より割安に投資できるチャンスだ!と余裕綽綽で言えるほど、まだ自分は投資家として成熟できていないです。

恐らくあと30年後に振り返ったら、あの時そんなことあったなくらいだと思います。
30年後に株価チャートを振り返ったら、今回の下落なんて一時的な小ショックにしか見えないと思います。
とはいえ今この瞬間、多額の損失を抱えている事実は目の前にあるわけで、これを完全にスルーできるほどの強い精神力は私にはありません。

なお、報道によると英国EU離脱による株安で世界の株式市場で215兆円の時価総額が失われたとのことです。

たまに、自分は長期投資家だから一時的な含み損は気にならないという方がいます。
本当でしょうか?
私も株式投資は30年超の長期で見ているので、今回のような特殊なイベントが起こっても絶対に狼狽売りはしないと決めていますし、株価はいずれ戻ると確信はしています。
でもたとえ一時的であっても、損をするのは精神的にしんどいと感じています。
これが本音です。

でもリスク資産たる株式に投資している者にとって、このような暴落相場を辛抱強く耐えることは必須かつ最重要のスキルです。
長期投資は己の感情との内なる闘いでもあります。

長期投資家として最悪の行動は暴落時に投げ売りすること。
株価が安くなっている時に売ってしまったら損するのは当然でしょう。

静観しておくことが大切です。
下落を狙って買う分には構いませんが、売るのは厳禁です。
どうしても資金が必要なら仕方ありませんが、不安になって売るのは絶対にダメ。
さらに下がるかもという根拠なき推測で一旦売って、下がってから再投資するという作戦もダメ。
そんな都合のいい取引、素人には絶対に無理。

とにかく嵐が過ぎるまでじっと身を潜めておけばいいです。
いくら損したか不安になるならネット証券の画面を開かないこと、私のように(笑)。
昨日は一切ネット証券の画面は開かず、今日になって恐る恐る開きました。

イギリスがEU離脱したからって何が変わるのでしょうか?
ブレグジットは欧州統合・グローバリゼーションの終わりの始まりという政治的なビッグイベントであることは事実です。

ただ、経済的な影響はどれほどでしょう?
イギリスとEU圏内との貿易は当面は今まで通り続きます。
今後2年間の交渉の中で、関税などの諸条件を決めていくことになります。
EU圏外の国々とも別途貿易協定を結ぶ必要もあるでしょう。
(このあたりの事務コストは半端ではない金額になることでしょう…)

当面は何も変わらないのです。
ただ、今後イギリスとEUの交渉がどう進むか読めないという不確実マターがあるのは事実。
EUを離脱したイギリスに余りに良好な貿易条件を出してしまうと、イギリス以外にもオランダなどが独立だ!と言い出しかねません。
かと言って、EUでドイツに次いで2位の経済力を誇っていたイギリスをビジネス上軽視することもできない。
難しいさじ加減が英国・EU両当局には求められます。

株式相場は不確実性をとても嫌いますので、そう意味で株価には確かにマイナスです。
ファイナンス的に言うと、将来予想配当の割引率が上昇して株価の現在価値が下がります。
でも、企業のビジネスにすぐさま影響することはありません。
株価の下落は一時的だと思います。

むしろ株価にはプラスの要因すらあります。
それは今回のEU離脱を受けて、FRBのイエレン議長は利上げを先延ばしにする可能性が高いからです。

 英国の決断によって米経済が長期にわたって悪影響を受けていることが明確になり、米経済が緩やかに成長し物価が上昇するとのFRBの見通しが大幅に下方修正される場合、FRBが政策金利をゼロに向けて引き下げる可能性も出てくる。

だがイエレン議長はこうした決定を下すまでに時間をかけると考えられる。そしてFRBの行動は、まず利上げを見送り、状況を注意深く見守るというものになりそうだ。

(ウォールストリートジャーナル日本版)

さすがに利下げをすることはないと思いますが、7月に利上げはしないでしょう。
野村証券の予想では、FRBの利上げは早くて2016年12月です。

イエレンさんはもともとハト派なので、焦って利上げをすることはないはず。

この点は、株式相場にとって素直にポジティブな要因と考えていいと思います。

イギリスのEU離脱は株式相場にとってむしろポジティブ。
何度でも言いますが、長期株式投資家はこの場面で株を手放してはいけません。
一時的な損失ショックを受けるのも株主の仕事です。

当面は混乱が続く可能性がありますが、株価はいつか必ず戻しますので紅茶でも飲みながらゆっくりしていましょう。

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市場の調整局面で大切なことは、何もしないこと

ふー、リーマンショックを経験していない自分にとっては本当にしんどい一日でした(汗)。
こういった経験を忘れずに、長期投資家として強くなっていきたい所存です!