2017年はビットコインがホットなネタでした。上昇相場は現在進行中ですが。2017年初1ビットコイン1000ドル程度だったのが、12月11日現在16,000ドルを超えています。年初からの上昇率は1500%を超えています。凄まじい上昇スピードです。

このビットコイン狂騒曲には普段投資に関心のない高齢者の方も参戦しているそうです。普段投資をしない人まで手を出し始めたら相場の締め時かもしれません。機関投資家は手の引きどころを探っているでしょうか。

さて、16,000ドルを超えたビットコインはバブルなのでしょうか?
あなたはどう考えますか?

価格が1年で10倍以上に急上昇したからって、必ずしも資産価格が不合理とは限りません。大事なのはチャートどうこうではなく、本源的価値と実際の価格との乖離を見極めることです。(通貨に本源的価値はないけれど。)

私の個人的意見ですが、ビットコインがバブルかどうかはわかりません。「わからない」とは逃げの回答でクソつまらないですね、すみません。でもわからないものはわからないです。なぜ「わからない」のか、その理由を書きたいと思います。

 

通貨の価値って何?
→通貨自体に価値はなし。他の通貨との相対評価でしかなく、それは需要と供給で決まる

株式の本源的価値は簡単に計算できます。将来配当の割引現在価値の合計が株式の理論価格です。簡単と言ってしまいましたが、実際に計算するのはとても難しく人によって答えは様々です。だから毎日マーケットは激しく動きます。

投資家によって予想する将来配当や想定する割引率に違いはあるものの、株式の価値が将来配当の割引現在価値であるという点は投資家の共通理解としてあります。金融商品の価値は、その商品が生み出す将来キャッシュフローの割引現在価値の合計です。

では、通貨の理論価値とは何でしょうか?

ドルや円、ユーロ、ポンドの価値はどう測るべきでしょうか?
ビットコインという通貨?の価値はどう測定すべきでしょうか。

先ず、通貨には株式のように将来キャッシュフローという概念はありません。通貨はそれ自体がキャッシュを生むわけではありませんから。通貨とは財・サービスを交換するための媒介役に過ぎません。通貨はそれ自体がキャッシュを生まないので、一般的な金融商品と同じ価値測定は不可能です。

一つ大事な前提として、通貨は常に相対的な価値評価しかできないという特徴があります。ドル単独の価値を求めるのは不可能です。円単独の価値を求めるのも不可能です。できるのは、円に対してドルがどれくらい価値があるかという比較です。通貨は別の通貨との相対評価でしか価値判断できません。

その前提を踏まえたうえで、通貨の価値はどう測定すればいいでしょうか?

通貨の価値、その評価は端的に言ってしまえば需要と供給です。日々の外国為替マーケットで値付けされるドル円の相場が、ドルと円の相対価値を示しています。ドル・ポンド、ドル・ユーロの相場もありますね。

まあ需要と供給って言ってしまえば、株式だって結局最後はマーケットで取引される株価で価値が決まるわけですし。通貨の価値も当然マーケットで価値が判定されるわけです。

と、ここで話が終わってしまってはつまんないですね。
では、もう少し踏み込みましょう。

通貨の需要と供給に影響を与えるものとは何でしょうか?

ドルで具体的に考えてみましょう。
ドルの需要と供給って何に左右されるでしょうか?

私ならこう答えます。
ドルの需要:ドル建て取引の経済規模
ドルの供給:FRBの通貨供給量(マネーサプライ)

供給面はFRBの金融政策次第です。よく金融緩和して資金量を増やすと通貨安になると言いますよね。日本でも黒田総裁が就任して緩和的な金融政策を採ってから円安が進みました。あれは、通貨供給量が増えるとの期待から円が売られたわけです。円の量が増えるんだから円の希少価値は下落してしまいます。量が多いと価値が下落するのは自然なことですよね。

供給面だけでなく需要面も通貨価値に影響します。ドルの供給量が増えても、それ以上にドル建て取引の規模が増えればドルの価値は下がりません。ドル供給量が100増えても、ドル建て取引の規模(=ドルの需要)が120増えれば追加供給された100のドルはすべて使用されます。むしろ20足りないくらいです。

よく経済が成長すればその国の通貨は強くなるって聞きませんか?
あれちょっと説明端折っている面があります。アメリカを例により厳密に言えば、アメリカ経済が成長することでドル建ての経済規模が拡大し、結果としてドルの需要が高まるためドル高になるというロジックです。

結局、すべては需要と供給なんです。その通貨の取引規模と中央銀行の通貨供給量の二つが需給に影響を与えます。この二つの要因が通貨の需給を決定し、それが日々の為替マーケットに反映されています。

中央銀行の通貨供給量という供給面にスポットが当たることが多いですが、需要面も忘れてはなりません。通貨の価値を保つためには通貨供給量をコントロールするだけでなく、需要面もコントロールする必要があります(それは難しいことだけど)。アメリカはなぜ原油取引をドル建てにすることにこだわっているのでしょうか?それは基軸通貨ドルの価値を維持するためです。

 

ビットコインの需要と供給は予測不可能

ビットコインも通貨として他の通貨との相対評価で見ていくしかありません。今、1ビットコイン16,000ドルを超えていますが、これが妥当かどうかは判断しようがありません。なぜなら、ビットコインの需要と供給が全く読めないからです。特に需要ですね。

ビットコインはまだほんの一部でしか実体経済の中では使われていません。日本でビットコイン決済を認めているのは、実店舗では220店舗、通信販売で56店舗だけです。家電やガシェット類が多いですかね。海外では大手会計事務所のPwC(プライスウォーターハウスクーパース)が、コンサルフィーの支払いをビットコインで受け付けるなんてニュースを見た記憶があります。一部不動産取引もビットコインを受け付けているようです。

まあ、とにかくビットコインはまだまだ投機のネタの域を出ておらず、実社会で通貨の役割を果たしているとは言えません。

通貨には以下の3つの要件が必要と言われます。
・価値の尺度
・交換(決済)の手段
・価値貯蔵

まだこの3つのどれもビットコインは満たしていません。ジェットコースターのような相場では価値貯蔵はできませんし、必然的に物やサービスの価値測定も無理です。決済速度はどうでしょうか。詳しくは知りませんが、中央銀行を介する現在の送金より、ブロックチェーンでの取引の方がさすがに決済速度は速いかもしれません。ただ速く決済するためには、分散データベースを運営する「マイナー」のコンピューターから優先的な取り扱いを受ける必要があり、それには割高な手数料が掛かります。銀行送金のような安価な手数料では、早期の決済は今はまだ無理です。

こんな感じで、ビットコインが通貨として将来的に普及するかわかりません。ましてや、ビットコイン建ての経済規模がどれくらいになるかなんて予測不可能です。

供給量についてですが、ビットコインは発行上限枚数が決まっています。2150年前後には採掘上限に達する可能性があります。最大発行量に到達するまではマイニングが可能で供給量はマイナーがどれだけ採掘(マイニング)するかによります。マイナーの頑張り次第で発行量が決まります。ドルはFRBがインフレ率を探りながら丁度いい具合の供給量を決めていますが、ビットコインの供給量はマイナー次第です。

こんな感じで、ビットコインの供給量は予測不可能です。
まあ、ビットコインの供給量は需要よりは予測しやすい気がします。少なくとも発行上限はありますし。

通貨の(相対)価値は需要と供給で決まるといいました。ビットコインの(ドルや円に対する)価値も、ビットコインの需要と供給のバランスで決まります。ところが、ビットコインは需要量も供給量も全く予見できません。

ビットコインの需給が予測できないということは、ビットコインの(相対)価値もわからないということです。

ビットコインは2017年初から1500%以上も上昇していますが、だからと言ってバブルと断じることはできません。かといってバブルじゃないとも言えません。答えはわかりません。

 

テクノロジーの発展は素直に歓迎したい。ビットコインはいずれ普及すると思う。

ビットコイン相場はバブルと言われていますが、マーケットがここまでビットコインの価格を押し上げているということは、将来的にビットコインが世の中に普及すると期待しているのでしょう。仮想通貨が現代の法定通貨(ドルや円)に取って替わるテクノロジーだと期待されているのでしょうね。

今のビットコインは上述の通り、とてもじゃないですが貨幣としての必要要件を満たしていません。しかし、今は初期投資ステージでしょう。

こうやってバブルかのように資金が集まることで技術が発展して、最後はその技術が庶民の日常生活に浸透していくことを私たちは過去経験しています。ITバブルです。あのバブルで集まった莫大な資金で海底ケーブルが敷かれ、私たちの快適な通信環境があります。

ビットコインが最近ホットな話題ですが、通貨自体は経済の本質ではなく、所詮買い手と売り手の橋渡し役に過ぎません。それは円もドルもユーロもポンドもビットコインも変わりません。たかが経済の仲介役だからこそ、ブロックチェーン技術による仮想通貨でよりセキュリティが高まって流通の効率性も高まるなら、仮想通貨を選ばない理由はありません。

お金はすべての人が「お金に価値がある」と信じるから価値があるとよく言われます。それはその通りで、ビットコインが普及するためには、皆がビットコインの安全性と効率性を確信して安心感を持つ必要があります。でないと普及しようがありません。国家の裏付けがある法定通貨はその点有利です。国家保証があった方が信頼されやすいですから。かつては金による裏付けまでありました(金本位制)。

僕は、個人的な希望としても予測としても、ビットコインなどの仮想通貨はいつか世の中に浸透するだろうと思っています。1980年代から始まったIT技術の開花はデジタル通貨で完結だと思います。通貨はセキュリティー面でもっとも慎重を期さないといけない分野ですから、デジタル化の最後の砦が通貨になることは必然かもしれません。