以前、保有銘柄以外で気になっている企業をウォッチ銘柄としてSeekingAlphaに登録しました。具体的には以下の4つ。

・ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)
・シスコシステムズ(CSCO)
・アボットラボラトリーズ(ABT)
・メルク(MRK)

このうちJNJとCSCOは実際に投資したので、もはや今はウォッチ銘柄ではありません。MRKはファイザー(PFE)の入替候補としているだけで今すぐ買うつもりはありません。

前から気になっているのがアボットラボラトリーズ(ABT)です。心臓血管領域に強い大手医療機器メーカーです。2013年に新薬開発部門をアッヴィとして分社化し、現在は後発医薬品と医療機器を取り扱っています。財務優秀で、旧アボット時代からの連続増配年数は46年にもなります。

高品質なものはお値段も高いのが資本主義社会のルール。アボットも例外ではなく、その株式はなかなかの高級品です。2019年予想EPSに基づくPERは26倍近くあります。ちょっと前「アボット欲しいけど高いな~」とぼやいていた時、ABTの株価は確か77ドルくらいでしたが、今では85ドルもあります。堅調な決算を好感してさらに上がっちゃいました。

PERが高い高い言うて買わずにいたら、結局いつまで経っても買いのチャンスは訪れないかもしれません。いつか下がるかもしれないけど、バリュエーションが高いままの可能性もあります。

ジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』によると、20世紀後半に高いリターンを実現した銘柄の大半は市場平均より高いPERでした。以下は高リターンを達成した銘柄の1957年から2003年の平均PERです。

フィリップモリス(13.1倍)
アボットラボラトリーズ(21.4倍)
ブリストルマイヤーズスクイブ(23.5倍)
トッツィーロール(16.8倍)
ファイザー(26.2倍)
コカ・コーラ(27.4倍)
メルク(25.3倍)
ペプシコ(20.4倍)
コルゲート・パルモリーブ(21.6倍)

(Source:『株式投資の未来』)

S&P500平均のPER17.5倍より低いのはフィリップモリスとトッツィーロール。あとは市場平均より高いPERです。 安かろう悪かろうの悲観的銘柄ではなく、マーケットの評価が高い楽観的銘柄のリターンが優秀だったということです。

株価が低迷し配当利回りが高まっている銘柄を辛抱強く保有し、配当を再投資し続ける。この戦法はハマれば大儲けできますが、株価が回復しなければ配当を加味してもリターンはそれほど大きくはならないでしょう。

無難な戦法は、みんなの評価が高い優良企業をほどほどの価格で買い続けることだと思います。具体的な銘柄で言えば、今回取り上げたアボットラボラトリーズ、決済大手のビザ(V)、マイクロソフト(MSFT)、ウォルマート(WMT)、ホームデポ(HD)、ペプシコ(PEP)、マクドナルド(MCD)などかな。

こういった目前の業績に大きな不安がなくPERが相対的に高めの銘柄というのは、一見すると割高に見えるけど、長期目線で見るとむしろ割安な可能性が高いです。「素晴らしい企業をほどほどの価格で買う」というバフェットの意見と、シーゲル氏の赤本での意見はほぼ同じだと私は今は解釈しています。

買値は常に大切なのは間違ないけど、PER20倍と16倍とでそんなにクヨクヨ悩むべきなのかってことです。益回りで言えば5%か6%か。長期投資において1%の差は大きいです。ただ、PER(益回り)ってあくまで翌期の利益と株価の関係でしかありません。益回りに1%の差があるからって、長期リターンに1%の差が出るわけではありません。リターンは長期的な増益幅がどれくらいかに依存します。想定する投資期間が長くなればなるほど、スタートの益回りの差はどうでもよくなります。

長期投資ならPERなんて無視してもいいのでは。いや、それは言いすぎか・・。ただ、割安か割高かよりもその銘柄が長期的に増益を続けていけるかどうかの見極めの方が遥かに重要です。

そんな理屈を頭で理解していても、やっぱりPERや配当利回りといったバリュエーションを過度に気にしてしまう自分がいます。本当の意味で長期的な視点に立ててない自分に気が付きます。でも、それはしゃーないかも。人生は有限だし、長期投資と言えども50年後、70年後なんて考えたくないです。10年、20年単位でもそれなりの成果を出したい。

となると、高PERはちょっと敬遠しちゃうんですよね。歴史ある有配企業でPERが26倍もあると、やっぱ抵抗を感じます。そして高PERアボットラボラトリーズではなく、低PER高利回りのアッヴィに資金を投じてしまう。んで今の結果はと言うと、アッヴィは大きな含み損状態。10年、20年単位で投資成果が欲しいからこそ、安全な高PER優良銘柄を選ぶべきなのかもしれません。

そんなことを遠ざかるアボットラボラトリーズの背中を見ながら考えていました。

最後に最近読んだ投資本で記憶に残った文章を紹介して、記事を締めたいと思います。

かつてのバリュー投資といえば、市場価格よりも安く有形資産を買うことだった。今日のバリュー投資は、持続的な競争優位性を割安に買うことである。バフェットの相棒、チャールズ・マンガーは、バークシャーによる1972年のシーズ・キャンディーズ買収が、その転機だったと回想している。

『世界最強のエコノミストが教える お金を増やす一番知的なやり方』

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